- 著者
-
松尾 誠紀
- 出版者
- 関西学院大学
- 雑誌
- 若手研究(スタートアップ)
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究は、他人が発生させた法益侵害に事後的に関与した者の罪責に関する全体的な理論的枠組みを構築することを最終的目標としながら、特にその第一階段として、事後的な関与時における(当初の正犯に対する)共犯成立の可否について検討することを目的とするものである。その目的の達成のためにはまず、基礎的研究としての共犯の処罰根拠論、承継的共犯論、犯罪の終了時期に関する個別的な調査。検討が欠かせない。そのため初年度は、それら三つの検討課題それぞれに特化した調査・検討に取り組んだ。本年度はそれを受けて、各個別的検討課題に関する基礎的研究を継続する一方、それと並行して、各個別的領域に関するそれぞれの検討結果を統合させ、「共犯成立の時間的限界」に関する詳細な基礎づけに向けた研究に取り組んだ。上記の徹底した取り組みの結果、共犯成立の時間的限界を基礎づけるに際しては、犯罪の終了時期ないし共犯の処罰根拠論の視点に基づく類型化が有効であるとの示唆を得た。現在、名誉毀損罪及び競売入札妨害罪の犯罪終了時期に関する重要な判例が相次いで公刊物に掲載されたことを契機に、学説において特に犯罪の終了時期に関する論考が盛んに発表されている公刊物に掲載されたことを契機に、学説において特に犯罪の終了時期に関する論考が盛んに発表されている状況である。そこで、本研究の最終的成果は、それらの論考に関する検討をも果たした上で速やかに公表する予定である。他方、本研究過程で得られた中間的研究成果についてはすでに、故意作為犯に対して事後的に関与した後行不作為犯の罪責を扱う下記業績に取り入れたかたちで公表している。従前の学説においては、事後的関考者をめぐる罪責自体への関心が低調であったことから、本研究の成果が有する価値は決して小さくない。