著者
大杉 豊 戸井 有希 鈴木 潔
出版者
筑波技術大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

日本手話言語地図の作成研究の第一歩として、全国47都道府県合計94名を対象に調査した範囲で、語彙レベルで地域による違い及び年齢層による違いの両方を示す言語地図の試作版をウェブ形式で製作した。分析の結果、(1)手話語彙レベルで地域的な分布が存在すること、(2)70歳代と比すると、30歳代では手話語彙レベルでの共通化が顕著であることの2点が明らかになった。
著者
徳永 聡子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、日本国内の大学ならびに研究機関の図書館が所蔵する英国初期刊本(1473-1600)に関して、所蔵情報の収集と書誌学的調査を行った。この結果、国内には220点以上もの英国初期刊本が所蔵されていることが、初めて明らかとなった。また各蔵書について実際に調査を行い、書物の著者名、タイトル、出版情報、さらには各コピーに特徴的な製本、書き込み、来歴の有無などの情報を記録し、本邦所在の英国初期刊本目録制作の基盤を整備した。
著者
久場 敬司 木村 彰方
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

新規ACE ファミリー分子であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)はアンジオテンシンII を分解してレニン-アンジオテンシン系を負に調節し、心血管機能の制御などに関与する一方で、SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスの受容体であるとともに、急性肺傷害において肺保護作用を発揮する。しかしながら、その肺保護作用の分子細胞メカニズムは不明であった。本研究課題において、私たちはACE2 の発現が酸化ストレスにより制御されることを見出し、遺伝子改変マウスを用いた解析からアンジオテンシンを介したマクロファージの活性化が重要であることを明らかにした。さらに酸化ストレスによる酸化リン脂質の産生を介した自然免疫シグナルの過剰な活性化が、SARS のみならず高病原性H5N1 インフルエンザによるARDS/急性肺傷害の病態発症に重要であることを見出した。実際にSARS などに加えて幅広い原因によるARDS/急性肺傷害の患者検体の肺病理組織においても酸化リン脂質の産生が認められた(Cell, 2008)。これらの成果は、SARS、急性肺傷害の治療のみならず幅広い疾患の病態解明、新しい治療法の開発に貢献することが期待される。
著者
柴田 みどり
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,比喩やアイロニーといった修辞表現の理解過程が,字義的な理解と比較してどのような神経基盤によって支えられているのかをfMRIを用いて明らかにした.その結果,比喩理解では,左下前頭回(BA45)と内側前頭回(BA9/10)により大きな賦活が見られた.またアイロニー理解では,内側前頭回(BA9/10),上側頭溝により大きな賦活が見られた.これらの結果より,比喩やアイロニー理解では,矛盾した発話から意味関係や発話意図を推論するという高次認知過程の関与が示された.
著者
久保 智英
出版者
作業条件適応研究グループ
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

疲労の回復は勤務中の手休めや休憩時にも生じるが、疲労が回復する大きな機会は勤務と勤務の間の余暇にある。しかし、これまで、どのような余暇の過ごし方が疲労回復に効果的であるのか、とりわけ昼夜の逆転が頻繁に起こる交代制勤務者に焦点を当てた知見は数少ない。本研究の目的は、健康生成論的な観点より、交代制勤務に従事する看護師を対象として、夜勤による疲労回復と余暇の過ごし方の関係を明らかにすることであった。
著者
朴 祥美
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究は昭和期日本の文化政策の歴史的経緯を検討し、また、日本の文化政策の方法論を韓国が導入した背景まで視野に入れることによって、アジアにおける文化政治論を豊かにする。
著者
池口 守
出版者
別府大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

前2世紀~後2世紀のイタリア半島における経済活動の変化を説明するために、農産物の生産・輸送・消費の複雑な相関関係を、考古学史料や経済地理学の理論を用いて明らかにした。(i)平和時の輸送費の低下に伴う農業立地条件の変化が栽培作物の選択に決定的な影響を与えたこと、(ii)紀元1世紀以降の農業の粗放化は、通説とは異なりローマ人が食肉として豚肉よりも牛肉を主に食していたことに関連すること、以上2点を明らかにしたことが特筆すべき成果である。
著者
武藤 大祐
出版者
群馬県立女子大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

サルドノ・W・クスモの活動をめぐって、インドネシアでの現地調査および国内での文献調査を行った。結果として比較的豊富な映像資料、詳細に記された活動履歴、文献を入手した他、多くの貴重な証言を得た。とりわけサルドノ本人の証言は、広く流布するサル・ムルギヤントの言説と食い違う部分が多く、アメリカのモダンダンスの影響よりもむしろインドネシアの政治・社会状況との深い連関をふまえた、より内在的な歴史記述の可能性が見えてきた。
著者
吉田 晋一
出版者
(独)農研機構
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、農産物直売所における需給ミスマッチを改善するため、定量的に需給の動向を把握し、需要予測を行うことを試みた。結果として、1.対象とした直売所では出荷点数の45%が残品となる一方で、平均25%の品目が欠品していた。2.欠品時の需要量は時間帯別販売点数に着目することで推測できる。3.需要量の日次変動は、(1)曜日などその日の特徴、(2)天候、(3)品目数、(4)経済指標などによって、ある程度説明可能であるといえる。
著者
メジアニ ヤーヤムバラク
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

トランジスタ内に生じるプラズラモン共鳴を利用したテラヘルツ(THz)帯動作デバイスの研究開発が活発化している。プラズモンの共鳴周波数は電子密度、ドリフト速度、およびゲート長によって定まる。プラズモン共鳴は、THz帯電磁波(THz波)放射源となるとともに、プラズモンの非線形性によって、注入THz波によるプラズモン励起によって整流効果が得られることが理論的に示されている。本研究では、小型集積化プロセス技術が利用可能な半導体材料を用いて開発した回折格子状HEMTをTHz帯電磁波の検出器として利用し、実験的にTHz波検出とその構造・材料依存性を明らかにした。
著者
宮崎 元裕
出版者
愛知江南短期大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

前年度に引き続き、価値教育に関する文献の収集・整理・分析を行いながら、諸外国における価値教育の機能変容に関して検討を進めた。その際、注目したのは、(1)中心的に教えられている価値観は1つか、それとも複数か、(2)その価値観を絶対的なものとして教え込んでいるのか、それともその価値観に対する批判的検討を許容する余地を許容しているのかどうか、という2点である。従来、1つの価値観を絶対的に教え込む傾向の強かった価値教育だが、近年の多文化化の進行に伴い、しだいに複数の価値観を取り扱いながら批判的思考力を重視するものへと変化する傾向が見られる。近年の特徴は、価値教育のなかでも、従来、特に絶対的な価値観を教え込む形態がとられることの多かった宗教教育についても変化が見られるようになった点である。本研究では、この点をトルコの公教育における宗教教育を事例に取り上げて明らかにした。イスラーム教徒が国民の圧倒的多数を占めるトルコでも、2000年以降、宗教教育の内容に変化が見られ、イスラーム以外の宗教を紹介しながら、イスラームと他宗教との違いを肯定的に捉え、他宗教に対する理解と寛容を促すものになっている。こうした変化は、従来のように宗教教育を通して国民共通の基盤として宗教を教え込むことで国民統合を図るだけでなく、他宗教に対する理解と寛容を全国民に教えることも必要となってきたことを示している。つまり、社会の多文化化の進行に伴い、共通の価値観を教え込むという価値教育の伝統的な機能だけではなく、多様な価値観に触れさせることで多様な価値観に対する理解と寛容の必要性を教え、また多様な価値観と比較することで自らの価値観を批判的に検討するような価値教育の機能が重視されるようになっているのである。こうした観点から公教育における価値教育のあり方を検討することが我が国でも求められる。
著者
布施 賢治
出版者
山形県立米沢女子短期大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

近代に士族が設立した士族会・旧藩奨学金団体が、地域の教育・尚武意識・士族意識の形成に果たした役割について研究した。現地の図書館・文書館に赴き諸会が発行した雑誌の分析等の実地調査を行った。その結果、諸会の基本的な存在形態、明治・大正・昭和期の各段階における組織の変化、資金の調達方法の変化、人材観の変化、育英事業に対する会員・地域の人々の認識の変化等を明らかにした。そして、地域社会の教育の発展・人材育成に重要な役割を果たした点を確認した。
著者
長谷川 豊 岡 芳知 片桐 秀樹
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

我々は、streptozotocin(STZ)の投与による急性膵β細胞傷害をきたしたマウスに骨髄移植を行うと、膵β細胞の再生が促され、血糖値はほぼ正常値に復することを報告した(文献2)。骨髄移植により骨髄由来細胞が膵に集積し、膵導管に位置する膵幹細胞や残存する膵β細胞を刺激し、膵β細胞再生を促進するという新しい機序が想定でき、自己の細胞をもとにして、体内での膵β細胞を再生させる方法を目指し研究を進めた。この膵β細胞の再生機序に関わる骨髄細胞のlineageの同定と発現遺伝子を同定でき、近く論文に投稿する予定である。
著者
富田 純子
出版者
愛知学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

日本におけるBongkrekin acid(BA)毒素産生菌の分布状況を明らかにするために生息調査を行ったところ、日本の農業環境から分離されたBurkholderia gladioli数株がBA毒素産生能を有していることが明らかとなった。抽出した毒素をマウスに投与したところ、マウスは亜急性に死亡し、胃の膨張が確認された。毒素は胃の運動に何らかの影響を与えていることが示唆された。
著者
松村 謙臣
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

卵巣癌細胞株のマイクロアレイ解析によって、明細胞腺癌を特徴づける遺伝子群を同定した。その結果、1) 卵巣明細胞腺癌を特徴づける遺伝子群には、チョコレートのう胞内の酸化ストレス環境によって上昇する遺伝子が多く含まれること、2) 明細胞腺癌は腎細胞癌と類似し、キナーゼ活性との関連が深いRas活性が高く、増殖能との関連が深いE2F活性が低いことを明らかにした。したがって、明細胞腺癌に対して、増殖をターゲットとする抗がん剤ではなく、キナーゼ活性を阻害する分子標的薬が有用と考えられた。
著者
橋本 剛
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

名人に勝つコンピュータ将棋の実現に向けて,動的なマージンを用いるFutility Pruningの提案,部分局面n-gram法の改良,詰め将棋探索で問題となる二重カウント問題の有効な対処法としてWeak Proof Number Searchの開発などを行った。マージンを用いるFutility Pruningの研究について,これまでfutility pruningは,チェスでは有効であるが将棋では探索空間の広大さと選択的探索が主流な事もあり,有効ではないと考えられていた枝刈り技術であった。しかし近年futility pruningを将棋に用いたBonanzaが好成績を収めて以降将棋でもfutility pruningが注目されることになった。futility pruningは大雑把な評価値にマージンを持たせαβのWINDOWから十分外れている場合に枝刈りをする技術である。これまでfutility pruningで用いるマージンには定数が用いられていたが,局面状況によって適切なマージンが変化すべきである場合に対応できないという問題があった。そこで,まずfutility pruningのマージンを定数で扱っている事による問題点を解析し,その改良案として,探索毎に動的なマージンを決定するアルゴリズムを提案,実装し評価を行った。その結果,動的なマージンを用いたfutility pruningが従来のものに比べて175勝138敗1分で統計的に有意に勝ち越し,その優秀性を証明することができた。部分局面n-gram法の改良では,プロ棋士の棋譜から頻度の高い指し手列を抽出し低ノイズで探索に組み込むことに成功した。また,指し手列の出現頻度をカウントし実現確率探索の遷移確率として扱うことでより人間らしい手筋を効率的に読ませることで探索の強化に成功した。詰み探索では従来のdf-pnに代わる二重カウント問題に影響されない新たな探索法Weak Proof Number Searchを提案し,ベンチマークテストでは611手詰みの「寿」をわずか数秒で解くなど従来手法に比べて圧倒的な性能を示した。
著者
門前 暁
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

ヒト臍帯血由来造血幹・前駆細胞であるCD34^+細胞に対する5テスラまたは10テスラという強定常磁場の長時間曝露は、細胞の生死には影響を与えなかったが、10テスラで16時間曝露により、巨核球・赤血球前駆細胞由来コロニー数は有意に増加した。このとき初期造血関連及び細胞周期関連遺伝子がshamコントロールに比べ有意な発現増加を示した。本研究よりヒト造血幹・前駆細胞に対する強定常磁場曝露が、巨核球・赤血球造血への分化を特異的に亢進することが明らかとなった。
著者
神原 信幸
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究により、アメリカの事例研究から、高大連携と学習の生産性の論点がリンクしていることが明確になり、教育接続の問題と、高等教育計画の効率化、社会発展アプローチ別の視点を包含した政策の理論化を果たした。日本でも、緊縮財政下の高等教育は、効率化と、教育機会の均等性の確保、大学教育の質の向上を追及することが必要であるが、そのための政策や実践の形成や、評価、改善のサイクルに資する基礎付けが可能になった。
著者
久保田 正和 木下 彩栄 保利 美也子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

在宅認知症患者とその家族を対象に、患者の認知症悪化予防と家族の介護負担軽減を目的に研究を行った。介入群には、スカイプ(テレビ電話)を通して主に看護師が相談に応じた。認知機能検査の結果は、介入群の得点に改善傾向が見られた。ADL機能評価は変化がみられず、記憶が少し改善されたとしても、それが身体の活動性に影響を与えるまでには至らなかったといえる。介護者の自記式アンケートでは「性格が明るくなった」「活動的になった」など患者同様に介入を良い印象として捉えていたようである。
著者
高 友希子
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

『法典調査会民法議事速記録』を見ると、参考文献として英判例の記載があるにもかかわらず、英法の日本民法典への影響に関する研究は極めて少ない状況である。そこで本研究では、民法716条が立法されるきっかけとなった英国における独立契約者概念の形成・発展のプロセスを、判例の検討を通じて解明することにより、英法の日本民法典への影響について検討を加えた。