著者
松山 周世 伊東 大
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.109-117, 2022 (Released:2022-07-01)
参考文献数
9

遊離組織移植後の血行動態をモニタリングし,血行動態を早期に判断し,移植組織を救済することは手術の成功率を高めるうえで重要である。術後のモニタリングには種々の方法が報告されているが,統一された血流の評価方法は確立されていない。今回われわれは,指装着型近赤外線組織オキシメータを用いて術後の移植組織のモニタリングを行い,その有用性を検討した。集積したデータでは,組織酸素飽和度(rSO2)が 30% 以上かつ総ヘモグロビン指数(T-HbI)が 0.48 以下であれば移植組織は全例生着していた。しかし,生着した移植組織と健側とでは,測定値に有意差がみられるタイムポイントも存在していた。rSO2とT-HbIの明確なカットオフ値はないが,手技が簡便,非侵襲的,再現性が高いといったさまざまな利点があり,臨床所見での評価に難渋する症例に対して,補助的なモニタリングとして有用な方法の一つと考えられる。