著者
松山 秀人 島津 彰
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/ジエチルフタレート系について、膜中に有機化クレイを添加し、有機-無機コンポジット膜の作製を試みた。得られた構造は二層連続構造であり、液-液相分離による構造の可能性が示唆されたが、DSCによる詳細な検討の結果、相分離機構はあくまで固-液型であり、溶液中のクレイが結晶核となって構造が形成されることがわかった。得られた中空糸膜が、従来の2倍程度の引っ張り強度と伸度を有することが明らかとなった。TiO_2を含む膜では主に光触媒反応による膜表面付着物の分解について検討されてきたが、ここではTiO_2の超親水化に着目し、ポリサルホン(PS f)/TiO_2コンポジット膜の作製と膜特性評価を行った。用いたTiO_2は粒子径180nmのナノ粒子である。TiO_2をPS fに対して2倍量添加した場合にも良好な中空糸膜が得られた。XPS測定により表面には有効にTiO_2が存在することが確認された。また、TiO_2の添加により、膜の弾性率は向上したものの、透水量はほとんど影響を受けなかった。得られた中空糸膜にUV照射後、その膜表面接触角を測定したところ、TiO_2添加による膜の親水性化は16日以上に渡って維持されることが明らかとなった。さらにUV照射TiO_2含有膜をブラックライト照射下で保存したところ、7日後には接触角は約10°と顕著な親水性を示した。中空糸膜をタンパク質(BSA)溶液に浸漬することにより、膜の劣化特性の評価を行った。UVを照射しない場合においてもPSf/TiO_2コンポジット膜は、PS f膜と比べ低劣化性を示した。UV照射後ではコンポジット膜の劣化特性はさらに抑制されることを見出した。従って、低ファウリング特性を有する膜の開発に成功したと言える。