著者
松岡 幹就
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.131-157, 2019 (Released:2019-10-02)
参考文献数
53

本稿は,日本語の「ている」進行形の文について,統語構造が異なる2つのタイプがあると論じる。一方では,「いる」が存在動詞として現れ,その項として主語名詞句と音形のない後置詞を主要部とする後置詞句を選択する。そして,その後置詞句内には,名詞化された節が現れ,その主語が「いる」の主語によってコントロールされるという二重節構造を成す。もう一方では,「いる」が相を表す機能範疇として現れ,単一節構造が形成される。無生名詞を主語とする「ている」進行形の文は,主語が「いる」によって選択されず,常に単一節構造を持つ。これによって,「ている」進行形の有生主語が,「ている」が付く動詞の種類に関わらず,内項の性質を示し得るのに対し,無生主語はそのような特徴を持たないという事実が説明される。さらに,ここで提案する2種類の「ている」進行形は,先行研究で分析されている,バスク語の2種類の進行形に対応すると主張する。