- 著者
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斎藤 英二
井口 正人
松島 喜雄
- 出版者
- 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- 雑誌
- 地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.5-6, pp.103-141, 2015-10-16 (Released:2016-01-16)
- 参考文献数
- 19
2014年8月3日に噴火した口永良部島(くちのえらぶじま)火山の山頂部に おいて,GPS連続観測を噴火直前までの約10年継続して行った.最も近接した観測点は火口までの距離が約230 mであるものの,噴火前1 ヶ月間の短期間に前兆を示す変位は捉えられなかった.しかし長期的にみると,全期間で4回,山頂域の膨張を示唆する変位を観測している.それぞれのイベントは数 cmの変位に数ヶ月かかる緩慢なものであるが,その変位は累積していった.初期のイベントは明瞭な地震の増加を伴ったが,後期になると地震活動の高まりはほとんど見られなくなった.イベントの間隔は次第に長くなるとともに,2009 年頃から長期的トレンドに加えて微少な変動が混在するようになり,この頃から変動のパターンが変化した.詳細な解析により,山頂部の変動は下部地盤の西変位の上に火口浅部の放射状の変動が重なることによって現れていることが明らかになった.2013年からは火口浅部の変動は,膨張からほとんど停止ないし収縮傾向に転じている.さらに山頂部の2観測点に共通の変動が観測されるようになったことから,山頂部のやや深い場所に別の変動源が現れた可能性がある.