著者
小林 丈芳 跡部 紘三 松川 徳雄 福岡 登
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.21-30, 2001-03-31

原子力・放射線教育の在り方を考えていくために,地域の生活環境が青少年の原子力等の知識やイメージにどのような影響をもたらすかを明らかにする目的で,徳島県と原子力発電所のある福井県敦賀市の中学生・高校生を対象に「エネルギー・原子力等に関するアンケート調査」を行なった。その結果,彼らの原子力・放射能・放射線に対する知識やイメージ等に関して次の点が明らかになった。現代社会において,徳島県の生徒は「火力」,敦賀市の生徒は「原子力」を最も重要なエネルギー資源と考えているのに対し,21世紀の社会では両地域の生徒共に「太陽熱・太陽光」を重要であると考えている。(2)同地域の生徒の多数が原子力・放射能・放射線についての知識をマスメディアから得ている。徳島県の生徒は「中学校」,敦賀市の生徒は「博物館・展示会」「家庭」から得たと回答した割合が高い。(3)原子力・放射能・放射線の知識に関して,徳島県の生徒は「原子爆弾」,敦賀市の生徒は「原子力関連施設」や「核燃料」に関連した用語や知識の回答が多い。また,敦賀市の生徒は,原子力等に対して「危険」とイメージする傾向にある。(4)エネルギー資源として女子は「太陽熱・太陽光」を重要であると考えている。また,原子力等の知識やイメージにおいて,男子は「危険」,女子は「原子爆弾」「有害」「恐い」「レントゲン」などを回答する傾向にある。これらの要因として,男女の知識量や感性の違い,胎児への悪影響に対する意識の違いなど教科教育以外の要因が考えられる。(5)(2)(3)より,知識の習得に関して,徳島県の生徒は中学校における平和学習,敦賀市の生徒は自治体や企業による啓発活動の影響を強く受けているものと考えられる。