- 著者
-
松木 駿也
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- pp.100192, 2015 (Released:2015-04-13)
1. はじめに 近年の観光形態の変容により観光客に対する地域の説明には、バスガイドのような画一的なガイドから専門知識と観光客を楽しませる技術が必要な解説活動(インタープリテーション)へ求められるものが変化してきた。そこで注目されているのが地域住民による観光ボランティアガイドである。世界遺産のような観光客の多く訪れる地域では受け入れ態勢の整備としてガイド育成が求められ、さらに、ジオパークのような学習観光の場では専門知識と適切な安全管理を行える有償ガイドも出現している。 そのような中で、島原市、南島原市、雲仙市からなる長崎県島原半島には、現在、有償無償の10ほどの観光ガイド組織が存在しており、世界遺産とジオパークという二つの大きな観光政策のもとガイド組織の再編が行われている。本報告では、その概要について述べ、観光ガイド組織やガイド個人への聞き取り、アンケート調査をもとに、再編過程にある島原半島の観光ガイド制度に対するガイド個人の認識や、ガイド間・組織間関係の変化から、現在のガイド制度の問題点と今後の持続可能性について考察していく。 2. 世界遺産による観光ガイドの統合 南島原市の日野江城跡、原城跡は、2007年に世界遺産暫定リストに記載され、2015年1月に推薦が決定した「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産となっている。これにより、日野江城跡、原城跡では観光ガイドの需要も高まると予想される。そこで市内の合併前旧町ごとに存在した5つのボランティアガイド組織を管轄する南島原ひまわり観光協会を中心に協議を重ね、5組織を「有馬の郷」に統合することとした。観光協会は旧町域を超えて地域資源を相互に通しで案内可能な人材(「スルーガイド」)を養成しようと画策している。これに対し、各組織は人材育成の必要性を強く実感しており、各組織にできる範囲での対応・協力をしていくこととしている。強いリーダーシップを発揮する観光協会のもと、目的を共有した既存ガイド組織が連携を図っていくこととなるが、一部のガイドへの負担増加が危惧される。 3. ジオパークによる観光ガイド・ボランティアの再配置 1990年代前半に噴火災害の起こった島原では、2004年からNPO団体がまだすネット(のちに島原半島観光連盟)に所属するガイドが有償の火山学習プログラムを行っていた。2008年に日本ジオパーク、2009年に世界ジオパークに島原半島が認定されるのを契機に、ジオパーク推進協議会事務局では2007年から養成講座を開講しジオガイドの育成を行った。参加者の多くは既存のガイドやボランティアであり、事務局はジオパークガイドとしての制度を確立することをしていなかった。しかし、世界ジオパーク再審査直前の2012年12月にこれまでに養成講座を受講した者などの希望者に認定試験を課し、これに合格した27名を有償ガイドを行う認定ジオパークガイドとし、観光連盟の中に組織した。そのため、観光連盟ガイドなど他の様々なガイド組織に重複所属する者もいる一方で、これまでにガイド活動を行ったことのない者も多く含まれる組織となった。また、かつて莫大な災害支援を受けた島原にはボランティア意識の強い者も多く、ガイド個人の背景の違いから組織内での意識がまとまらない。また、ジオパーク事務局と観光連盟の2つの上部組織、認定ジオパークガイドと観光連盟ガイドの2つのガイド組織が併存することもその溝をさらに深める要因となっている。ジオパーク事務局がガイドを把握し、まとめることができておらず、現場であるガイドとの意思疎通をとれる制度の確立がもとめられる。