著者
松本 敏治 安藤 房治 飯田 かおり
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.187-196, 2002-03

弘前市「つがるLDを考える会」および青森市LD親の会「こんぺいとう」の保護者に対して,1.子どもの実体,2.現状,3.教育的ニーズ,4.家族関係を明らかにすることを目的にアンケートを実施した。結果は,1)子どもの約4分の1のみがLD/ADHDとの医学的診断をうけているにすぎない,2)ADHDの医学的診断と教育的判定の間に大きな乗離が見られる,3)多くの子どもが,集中力および対人関係上の問題を抱える,4)保護者の6割が,担任は子どもの問題を理解しているととらえているが,そのうち特別の配慮がなされているとしたものは6割である,5)子どもの対人関係は,非常に狭い範囲に限られている,6)学校への要望としては,教員の理解を求めるものがもっとも多い, 7)保護者は,子どもにとって適切な環境として"通常学級での特別な支援''を考えている,8)地域に不足している支援機関として"LD/ADHDの教育相談機関""LD/ADHDの医療機関"が挙げられた,9)家族の中にも子どもの状態を正確に把握し得ていないものがいるとの回答が約半数で見られた,ことを示した。
著者
松本 敏治
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.103-113, 2006-07-31 (Released:2017-07-28)

漢字の読み書きに困難を示し意味錯読が顕著にみられる青年の平仮名読みの処理特性を意味的処理・音韻的処理の側面から検討するため、2つの単語リスト読み課題と漢字読み判断実験を行った。本症例では、1)第一の単語リスト読み課題では、平仮名一文字・イラスト・有意味単語の読み速度は健常成人と差がなく、無意味語読みにおいてのみ顕著な遅れがみられた。2)第二の単語リスト読み課題では、意味性の高い単語は繰り返しにより読み速度が顕著に上昇した。3)漢字読み判断課題では、読みが正しくないとの判断の場合、漢字と意味的に関連した場合(町・むら)での反応が意味的に無関係な誤り読み(町・かめ)の場合に比べ反応時間が有意に長かった。また、本症例は本実験実施時、日常生活において漢字の読字書字困難は顕著であったが、平仮名読みの困難は認められなかった。これらの結果に基づいて、本症例の平仮名読み習得と障害機序を考察した。