著者
赤井 純治 大藤 弘明 松本 嘉文
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.148, 2005 (Released:2006-09-08)

炭素質コンドライトのマトリックスは微小な鉱物の集合体で、マトリックス鉱物はフィロシリケート・PCP・硫化鉱物・酸化鉱物・炭酸塩鉱物・硫酸塩鉱物・炭素鉱物・等が含まれる。これらの鉱物種、結晶形態・集合状態・組織は、それら鉱物あるいは隕石自体の生成に関する重要な情報を示唆していることが考えられる。構成鉱物のなかには多くの特徴的あるいは特異な鉱物も含まれるが、生成条件等明確になっていないものも多い。その詳細は電顕鉱物学の視点からの解明されるところも大きい。磁鉄鉱についてはこれまでにもJedwab(1968), Kerrige(1979)、Hua et al., (1998)などが主にSEMによって 記載している.磁鉄鉱には次の種がある。a)よく結晶面が発達した単結晶磁鉄鉱, それらのフランボイド状の集合体、 b)特異な板状(platelets)の形態の積み重なりをもつ磁鉄鉱(plaquettes:Jedwab,1968),c) 球顆状構造をもつ球状晶が,主にみられる.この他に単独でより大きな単結晶のものもあるとされている(Jedwab,1968). それらがどういう条件で生成したのか、生成の場の違いはあるのか、生成の順序はどうか、等成因にからんだ問題がある。今回、とくにフランボイダル形態の磁鉄鉱を中心に検討し、さらに他の2つについても検討した。フランボイド集合は、自己組織化の構造として注目される。地球表層環境中のパイライトではとくに 20面体構造のものを見いだしている(Ohfuji and Akai,2002). 20面体構造を形成する基礎には、マイクロクリスタルのccp、hcpなどの規則配列構造がある。これに対し、ランダムタイプもある。またサイズ的にはフランボイド粒直径とマイクロクリスタルサイズの比も指標となり、核形成条件のちがいが議論される。つまり、これらの生成条件が隕石中のフランボイダル磁鉄鉱の生成条件にかかわって、条件推定に役立つことも期待できる。試料は炭素質コンドライト,Ivuna, Orgueil , Tagish Lakeの三試料を用い、その中の磁鉄鉱に着目して,透過電顕及び走査電顕で観察した.Ivuna 、Orgeil ではあまり大きな違いがみられない。フランボイドを構成するマイクロクリスタルのサイズは、0.2_から_1μm程度の幅がある場合と、そのサイズが揃っている場合とがある。このうち、今回Orgueil から、規則構造が見いだされた。マイクロクリスタルはサイズが約0.5μmで、全体の形態はフランボイド状である。マイクロクリスタルが、直線的に配列し、その間に最密充填状に次列がならぶという、パッキング様式を示す。最密充填構造によるフランボイダルパイライトと同様な組織をもつものが存在する可能性が高い。また、別のグレインで、磁鉄鉱外周に,蛇紋石構造のフィロシリケートがおおうこともある。磁鉄鉱には、ランボイド、plaquettes、球晶の3種が含まれ,このことは3つのことなった生成時期があったこと,または3種の起源の多少ことなった物質の混合,があると考えられ、また結晶面のよく発達したタイプの磁鉄鉱の生成にひきつづいて,フィロシリケートがこれを覆うように成長付加したということを示しており,原始太陽系星雲内での生成プロセス,また炭素質コンドライト母天体上プロセスでの制約条件をあたえている.さらに、生成順、生成のメカニズムについても議論する。