著者
吉村 尚久 赤井 純治
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.137-154, 2003-06-25 (Released:2017-07-14)
被引用文献数
5

自然状態での地下水のヒ素汚染は世界的問題となっており,特に沖積滞水層では深刻な健康障害をもたらしている.本総説では土壌及び堆積物中のヒ素の挙動の概略を述べ,ヒ素の起源・濃縮・溶出及び微生物活動とのかかわりなどについて述べた.堆積物からの溶出メカニズムについては詳しくレビューした.最も深刻なヒ素汚染地域であるバングラデシュと西ベンガルでのヒ素汚染メカニズムを要約し,問題点を指摘した.内蒙古河套平野のヒ素汚染についても言及した.
著者
中野 聰志 岡村 聡 赤井 純治
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.221005, 2023 (Released:2023-01-31)
参考文献数
54
被引用文献数
2

The usage of “potassium feldspar” and “alkali feldspar” has been confused in earth sciences for a long time. The term “alkali feldspar” is for the solid solution series between the two components of KAlSi3O8 (potassium feldspar) and NaAlSi3O8 (sodium feldspar), including more or less CaAl2Si2O8 (lime feldspar) as the third component. The term “potassium feldspar” is in practice for KAlSi3O8 as an end member of the feldspar solid solution. At present, the scientific or appropriate usage of the two terms without confusion is needed in earth sciences. This review outlines the history of hitherto confused usage of the two terms, and interprets how important the appropriate usage of the two terms is in earth sciences, especially in mineralogical and petrological sciences. We recommend that perthite should be termed not “potassium feldspar” but alkali feldspar, and that the term potassium feldspar should be applied to alkali feldspar at least with KAlSi3O8 content ≥ 90 mol%.
著者
赤井 純治 長峰 崇 山本 玄珠 北垣 俊明 海野 友紀
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.106-106, 2005

深海のマンガンノジュールは、1873年グロマーチャレンジャー号の発見以来多くの研究があり、またその成因も様々に議論されている。最近、ノジュールにみられる縞状構造はミランコビッチサイクルに対応するという解釈もある(Han et al., 2003)。マンガン酸化バクテリアも、ノジュールに付着しているとの報告がある( e.g.,Edenborn, et al., 1985 ) が、詳細な成因についてはわかっていない。淡水性環境でも、様々なマンガン土沈殿、ノジュール状沈殿、温泉性のストロマトライト構造をもつもの(赤井他、1997)等報告がある。山本他(2004)は、青森県尾太鉱山排水路中から、大きさ7cmを越す、マンガン団塊が生成していることを報告した。これによると、このマンガンノジュールの組成は、平均MnO=60%程度で他の金属として、ZnO=4%、CaO=3% 程度を含む。今回、この尾太鉱山産マンガンノジュールの生成過程をしらべる為に、マンガンノジュールの生成の初期段階とノジュールの組織・構造に注目し、電顕鉱物学、バイオミネラリゼーションの視点から検討した。産地と試料:尾太鉱山が閉山(1978年)後の坑内排水溝に茶褐色微生物マットが生成し、その中に0.数mmから数cmの黒色Mnノジュールが生成している。水質は以下のようである:pH= 6.8-7.1 Mn= 20-24 ppm, Ca, 270-290ppm, Mg= 28-31ppm, Zn = 6-8ppm, Cl = 6ppm, NO3= 17ppm, SO4 =529-661ppm. ORP =85-135mV, EC=_から_1270μS。この微生物マットごと、試料を採取し、SEM、TEMで観察した(TEM は JEOL JEM2010、EDSはNoran Inst., Voyager IV )。結果と考察:微生物マットは主に鉄酸化バクテリア、ガリオネラとそれが作りだしたら旋状の水酸化鉄の柄の部分からなる。ガリオネラの水酸化鉄は高倍率のTEM像で、さらにこまかな、ナノサイズのアモルファス鉱物粒子であることが解像される。TEM観察で、ガリオネラのバクテリア部分がみられるが、一部のガリオネラのバクテリア本体がマンガン鉱物に覆われているものが今回見いだされた。このEDS組成分析もあわせ、マンガン鉱物のバイオミネラリゼーションと解釈される。一般には、ガリオネラはMnを酸化しないとされているが、極限的な条件下で、利用できるFeがなくなり、Mnがある場合には、マンガン酸化にガリオネラがかかわってくるか、あるいは何らかのバクテリア表面の化学的性質の変化による沈着であろうことを示唆している。このようなマンガン鉱物集合の形態は、1μmスケールの扁形な形態から、少し大きな球状まで、やや幅がある。また、ガリオネラのつくった水酸化鉄のらせん状の柄にからみつくように、マンガン酸化物がみつかることもあり、これは、ガリオネラが特徴的な鉄水酸化物の柄を出しつつある過程でマンガンを沈殿したようにみえる。これまでの観察では、ガリオネラ自身が、マンガンノジュールの最初の端緒をつくった可能性も考えられる結果といえる。微小ノジュールの形態は、ガリオネラマットに支えられて、球状形態が形成され、成長する。また、イオン研摩試料について観察し、縞状構造の結晶サイズの疎密、によるちがいが観察できた。試料Aのマンガン鉱物は buseriteであり、葉片状の層状構造をなすことが、HRTEMで観察された。成因について、さらに議論する。
著者
間嶋 寛紀 赤井 純治 茅原 一也 中牟田 義博 松原 聡
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.138, 2003 (Released:2004-07-26)

新潟県青海・糸魚川地域のヒスイ輝石岩中にはヒスイ輝石岩形成以降に形成された二次的な脈が多く存在し,ここからはSrを主成分とする鉱物が多く産したが,蓮華石もその一つである 蓮華石(rengeite)Sr4ZrTi4 (Si2O7) 2O8は新潟県西部,青海・糸魚川地域の蛇紋岩メランジ中に含まれるヒスイ輝石岩から発見された(Miyajima et al.,2001).蓮華石は単斜晶系に属し,格子定数はa=13.97(1),b=5.675(7),c=11.98(1)Åである. 今回新潟県青海町産白色ヒスイ輝石岩を調べている中で二次的な脈の中から蓮華石様鉱物を見出した。肉眼あるいは双眼実体顕微鏡下では淡灰色から暗青灰色の色を示し長さ1mm以下の脈状集合体または長さ0.2mm以下の短柱状自形結晶をなして産する.共生鉱物は脈を埋めて産するソーダ沸石と,初生的に形成されたジルコンである.ヒスイ輝石は0.5mm以下の自形から半自形で,しばしば脈状に著しい破砕を受けている.この蓮華石様鉱物の短柱状の形態はこの試料以外ではほとんど見られず,他の試料では蓮華石は放射針状の結晶集合体をなすことが多い.本試料は偏光顕微鏡下では濃青色から淡褐色の強い多色性を示すものと,多色性を示さないものとがあり,短柱状の単結晶の柱面に平行にzoningしているものが多い.通常の薄片の厚さではわからないが,イオン研磨により極めて薄くした薄片ではクロスニコルでバンド状の組織が認められることがある.この蓮華石様鉱物は非常に小さいため,イオン研磨にて試料を作り,透過型電子顕微鏡で解析した.EDSによる定量分析では組成はSiO2=23.0,TiO2=28.3,Fe2O3=0.4,SrO=41.3,ZrO2=6.7,Nb2O5=0.4 wt.%という値が得られた.電子線回折では蓮華石のd001周期が2倍の位置に回折スポットを示し,いくつもの回折パターンの特徴から蓮華石の多形,斜方晶系相と解釈される.Auを標準としたEDパターンの解析から,この鉱物の格子定数はa=14.0,b=5.7,c=21.9Åである.この斜方晶系単位格子は,輝石,角閃石等と類似の,単斜晶系単位格子が格子レベルでの双晶を作った格子関係にある.高分解能像では双晶構造に対応する像が解像される.なお,蓮華石の原構造ともいうべきperrierite (Ce,La,Ca,Sr)4FeTi4 (Si2O7) 2O8,chevkinite(Ce,Ca,Th)4(Fe,Mg) (Ti,Mg,Fe) 4(Si2O7)2O8には斜方晶系の報告はされていない.この蓮華石様鉱物については現在ガンドルフィーカメラ,XMA他でさらに検討中である.
著者
赤井 純治
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.2, pp.213-233, 2022-04-25 (Released:2022-05-13)
参考文献数
62
被引用文献数
2

One of the most significant developing fields in mineralogy during the last quarter century involves interactions between microbes and minerals in the environment. A mineral evolution has been suggested. The fundamentals of biominerals, interactions between biosphere and minerals, and expanding knowledge of the biosphere are presented. Interactions between minerals and microbes are closely related to the evolution of the Earth's surface environment, and they suggest keys for solving environmental problems on the Earth. They are also related to the search for extraterrestrial life. This review sketches a brief history of mineralogy, referring to TEM methods, concerning regularity, irregularity, and interactions of minerals.
著者
赤井 純治 大藤 弘明 松本 嘉文
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.148, 2005 (Released:2006-09-08)

炭素質コンドライトのマトリックスは微小な鉱物の集合体で、マトリックス鉱物はフィロシリケート・PCP・硫化鉱物・酸化鉱物・炭酸塩鉱物・硫酸塩鉱物・炭素鉱物・等が含まれる。これらの鉱物種、結晶形態・集合状態・組織は、それら鉱物あるいは隕石自体の生成に関する重要な情報を示唆していることが考えられる。構成鉱物のなかには多くの特徴的あるいは特異な鉱物も含まれるが、生成条件等明確になっていないものも多い。その詳細は電顕鉱物学の視点からの解明されるところも大きい。磁鉄鉱についてはこれまでにもJedwab(1968), Kerrige(1979)、Hua et al., (1998)などが主にSEMによって 記載している.磁鉄鉱には次の種がある。a)よく結晶面が発達した単結晶磁鉄鉱, それらのフランボイド状の集合体、 b)特異な板状(platelets)の形態の積み重なりをもつ磁鉄鉱(plaquettes:Jedwab,1968),c) 球顆状構造をもつ球状晶が,主にみられる.この他に単独でより大きな単結晶のものもあるとされている(Jedwab,1968). それらがどういう条件で生成したのか、生成の場の違いはあるのか、生成の順序はどうか、等成因にからんだ問題がある。今回、とくにフランボイダル形態の磁鉄鉱を中心に検討し、さらに他の2つについても検討した。フランボイド集合は、自己組織化の構造として注目される。地球表層環境中のパイライトではとくに 20面体構造のものを見いだしている(Ohfuji and Akai,2002). 20面体構造を形成する基礎には、マイクロクリスタルのccp、hcpなどの規則配列構造がある。これに対し、ランダムタイプもある。またサイズ的にはフランボイド粒直径とマイクロクリスタルサイズの比も指標となり、核形成条件のちがいが議論される。つまり、これらの生成条件が隕石中のフランボイダル磁鉄鉱の生成条件にかかわって、条件推定に役立つことも期待できる。試料は炭素質コンドライト,Ivuna, Orgueil , Tagish Lakeの三試料を用い、その中の磁鉄鉱に着目して,透過電顕及び走査電顕で観察した.Ivuna 、Orgeil ではあまり大きな違いがみられない。フランボイドを構成するマイクロクリスタルのサイズは、0.2_から_1μm程度の幅がある場合と、そのサイズが揃っている場合とがある。このうち、今回Orgueil から、規則構造が見いだされた。マイクロクリスタルはサイズが約0.5μmで、全体の形態はフランボイド状である。マイクロクリスタルが、直線的に配列し、その間に最密充填状に次列がならぶという、パッキング様式を示す。最密充填構造によるフランボイダルパイライトと同様な組織をもつものが存在する可能性が高い。また、別のグレインで、磁鉄鉱外周に,蛇紋石構造のフィロシリケートがおおうこともある。磁鉄鉱には、ランボイド、plaquettes、球晶の3種が含まれ,このことは3つのことなった生成時期があったこと,または3種の起源の多少ことなった物質の混合,があると考えられ、また結晶面のよく発達したタイプの磁鉄鉱の生成にひきつづいて,フィロシリケートがこれを覆うように成長付加したということを示しており,原始太陽系星雲内での生成プロセス,また炭素質コンドライト母天体上プロセスでの制約条件をあたえている.さらに、生成順、生成のメカニズムについても議論する。
著者
赤井 純治 中牟田 義博
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.139, 2004

ユレイライト中のダイヤモンドの起源については、ショックによることが指摘され ている(Nakamuta and Aoki, 2000)。南極隕石であるユレイライトY-74130の中に含 まれる炭素鉱物についてガンドルフィカメラで検討すると、ダイヤモンド、グラファ イト、コンプレストグラファイトが確認された(Nakamuta and Aoki, 2001)。炭素鉱物以 外ではカマサイト、マグヘマイト、トロイライト、シュライバーサイト等が少量含ま れる。このガンドルフィカメラで検討された試料について、高分解能電顕観察を行 い、それらの相互関係、それらの生成過程について推定を試みた。 試料は100μm程度のグレインであったが、混合物であった為に、そのまま超硬合 金で圧砕して粉砕し、エタノールで軽く分散し、金のみを蒸着グして補強して作った マイクログリッド上に滴下、乾燥させて試料調整を行った。粉砕はしたが、混合物は 局所的な組織は残していると考えられる。用いた電顕はJEM2010、200kVで観察 した。得られた高分解能写真では、1)それほど分散化してない粒子で、極めて多種の鉱物が混在分布することがわかった。2)ダイヤモンドはこれらの粒のうちでは比較的大きな粒子として存在した。3)グラファイトだけが濃集している部分もみられた。グラファイトはかなり厚みの ある比較的結晶度のよいものの他に、積層数が少なく結晶度があまりよくないものも 存在する。また、板状のグラファイトのなかでも積層状態があまりよくないものもみ られ、多様な状態があることが観察された。4)ダイヤモンドのグレインで、ダイヤモンドの3方向の{111}格子像が広く見られ る (2Å)。2Åの{111}面の格子像のごく一部、この2Åの倍周期にコントラスト を示す部分が存在する。5)このダイヤモンド{111}格子像にほぼ平行にグラファイト(001)格子(3.4Å) が並び、ダイヤモンド{111}格子像に移化するようにみえる部分が存在した。これ は、グラファイトからダイヤモンドへの構造変化の過程をみているものと解釈でき る。 6)移化の途中でも約4Å周期に対応する格子が見られる(これがコンプレストグラフ ァイトに近い構造かと推定される)。以上から、このダイヤモンドはショックにより、グラファイトから転移して生成した ものであること、その転移の途中が、ごく一部のこされていること、一部ダイヤモン ドは、{111}面の2倍周期つまり、六方構造に近い構造をとっているの可能性がしめ された。これらの結果は、コンプレストグラファイトの非常にブロードな回折線、プリズム反 射のダイヤモンド回折線等.X線的特徴(Nakamuta and Aoki, 2001)と調和的であ る。Ref. Nakamuta and Aoki (2001) Meteor. & Planet. Sci., 36, A146 (abstract).
著者
赤井 純治
出版者
日本宇宙生物科学会
雑誌
Biological Sciences in Space (ISSN:09149201)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.363-371, 2000
被引用文献数
2

Recently, there is strong interest on microbe - mineral interactions. This is related also to recent expanded knowledges on extremely severe environments in which microbes live. Interaction between microbes and minerals contains biomineralization processes. Varieties of biomineralization products are found not only in various geologic materials and processes in the earth's history but also in present surface environments. Some hot springs represent such environments similar to those of unique and extremely severe environments for life. In this short review, the author briefly shows some examples of biomineralizations at some hot springs and mineral springs, Japan . In such environments, iron ore was formed and some varieties of growing stromatolites were found. The varieties of stromatolite are siliceous, calcic and manganese types. Cyanobacteria and the other bacteria are related to form the stromatolite structure. In the Gunma iron ore, sedimentary iron ores were mineralogically described in order to evaluate the role of microorganisms and plants in ore formation. The iron ore is composed of nanocrystalline goethite. Algal fossils are clearly preserved in some ores. Various products of biomineralization are found in the present pH 2-3, Fe<SUP>2+</SUP>- and SO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP> - rich streams. Bacterial precipitation had variations from amorphous Fe-P-(S) precipitates near the outlet of mineral spring, to Fe-P-S precipitates and to Fe-S-(P) precipitates. Mosses and green algae are also collecting Fe precipitates in and around the living and dead cells. The Gunma Iron Ore can be said as Biologically Induced Iron Ore. At Onikobe and Akakura hot springs, growing stromatolites of siliceous and calcareous types, were found, respectively. At Onikobe, The stromatolites grow especially near the geyser. Cyanobacterial filaments in stromatolite were well preserved in the siliceous and calcic stromatolites. The filaments oriented in two directions which form the layered structures were found. At Yunokoya hot spring, black and brittle stromatolitic structures which were composed of amorphous Mn minerals are growing. The form of these structures are hemispherical. Many bacteria that were coated with amorphous Mn minerals were found on these structures. Furthermore, Precambrian ( Proterozoic : Wittenoom- Chichester region, western Australia) manganese stromatolite was briefly shown in comparison. The black stromatolite has been clarified to be composed of todorokite. Small spotty and donuts-like shaped todorokite aggregates which are very similar to biologically induced Mn-precipitates were found in massive dolomite layers.
著者
赤井 純治 川本 光基 赤井 くるみ
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
鉱物学雜誌 (ISSN:04541146)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.93-97, 1996-05-31 (Released:2009-08-11)
参考文献数
11

Iron ores and mineral spring water from Gumma Iron Mine were examined mainly by TEM. Biomineralization was found on diatom and bacteria in the spring water, and also on living moss. Aggregates of cyanobacteria-like fossils were found in some iron ore which is composed of goethite and jarosite. They were examined by EPMA and TEM (lattice imaging). The formation mechanism of iron ore was discussed and biogenic contribution to the ore formation was suggested.
著者
青木 崇行 赤井 純治
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.125-132, 2005-03-25
被引用文献数
1

炭素鉱物のバラエティーとして,ダイヤモンド,グラファイト,フラーレン,カーボンナノチューブ,シュンガイト等がある.これらの概要を簡単にまとめ,その上で隕石中に含まれる炭素鉱物の研究の現状についてレビューした.さらに,南極産を含む炭素質コンドライト中の炭素鉱物を透過型電子顕微鏡で観察し,予報的に記載した.この結果,これら隕石中の炭素鉱物については,ナノメートルサイズのダイヤモンド,結晶度の異なる各種グラファイト,炭素が主体の非晶質物質等,さまざまなものが含まれることが分かった.またこれらの含有量比は隕石タイプにより異なる傾向がみられた.これら微小鉱物を捉えるには高分解能電子顕微鏡法が最も有力な研究手段であることを示した.
著者
大藤 弘明 赤井 純治
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.103-110, 2005-03-25

20面体構造をとる物質は自然界において極めて稀である.また,並進対称を満たさない5回対称軸を伴うため,鉱物(単結晶)においても原則的に禁じられた構造である.しかし近年,堆積岩中などに広く産するフランボイダルパイライト(黄鉄鉱の木苺状集合体)中から20面体の対称を示すドメイン構造が見出された.本論では,その特異な構造について概説するとともに,天然・合成物質における類似構造体との比較検討を行った.フランボイダルパイライトにおける20面体構造は,中心で頂点を共有して集合した20個の四面体ユニットより構成される.各ユニット内において,マイクロクリスタルは互いの結晶方位を共有し,立方パッキングを形成している.このような多粒子の緻密な集合によって造られる20面体構造は,天然においても他に例がなく,ミクロスケールにおける鉱物の結晶化の新たな一面を示しているといえる.一方,実験合成物,特にクラスターなどのナノスケールの物質においては,20面体パッキング構造は比較的普通に認められる.特に,構成粒子のサイズ,属性こそ大きく異なるが,Au微粒子などに代表される多重双晶粒子と20面体型フランボイダルパイライトとの間に,構造的な共通点が多く認められた.この事実は,ナノスケールからミクロスケール,さらにはマクロスケールに至るまでの微粒子の一連の挙動,クラスターの形成から粒子の成長,結晶相への転移など,を理解する上でも重要な手がかりとなる可能性がある.