- 著者
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福島 可奈子
松本 夏樹
- 出版者
- 日本映像学会
- 雑誌
- 映像学 (ISSN:02860279)
- 巻号頁・発行日
- vol.103, pp.91-112, 2020-01-25 (Released:2020-02-25)
本稿は2018年に筆者らが入手した幻燈兼用の水平走行型玩具映写機とそのフィルムの精査と復元、19世紀末から20世紀初頭にかけての日独仏の玩具会社の販売カタログなど一次文献資料の分析によって、これらのアニメーションフィルムとその水平走行装置の存在とその映像史上の意義について論じる。一般的に映画はリュミエールのシネマトグラフから始まったとされる。シネマトグラフ装置はフィルムを垂直に走行することで撮影・映写するものであり、現在のようにデジタル化が進むまで、映画はフィルムを垂直走行することで現実世界を記録・再生するのが当然であると考えられてきた。だがシネマトグラフが誕生した当初、家庭などの非劇場空間においては、実は実写映画の垂直走行装置よりもアニメーション映画の水平走行装置が先行していた。この発想は家庭用の幻燈など種々の光学玩具の延長上に必然的に登場したものであった。それ故筆者らは入手し復元された玩具フィルム2本が最古のアニメーション映画である可能性が極めて高いことを実証的に論じる。幻燈から映画へとその流行が大きく移り変わるメディアの過渡期において、この水平走行型が大衆の映像メディアの認識において重要な役割を果たした点を本稿は明らかにする。