著者
鈴木 友宜 荒井 邦佳 岩崎 善毅 片柳 創 高橋 慶一 山口 達郎 松本 寛 宮本 英典
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.1503-1508, 2004-08-01
被引用文献数
5

症例は45歳の男性で,1986年,発熱,皮疹,リンパ節腫脹にて発症し,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:以下,SLE)と診断された.2003年1月17日より発熱・嘔吐・腹痛を認め,1月24日の腹部CT検査にて,腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔,汎発性腹膜炎と診断し,同日,緊急開腹手術を施行し,壊死した直腸S状部に穿孔を認めた.組織標本より,壊死型虚血性腸炎と診断した.術後,エンドトキシン吸着療法・持続的血液濾過を導入し,集学的治療にて軽決した.自験例のように,SLEに消化管穿孔を伴った症例は,本邦で過去28年間に23例報告されている.なかでも23例中9例が死亡し,そのうち5例が下部消化管穿孔であった.SLEの経過中みられる消化器症状として穿孔はまれではあるが,発症すると致死率は高く,SLE患者が腹部症状を訴えてきた際には,その存在と危険性を十分に理解する必要があると考える.
著者
松本 寛
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.717-726, 1979-06-01

胎児・胎盤機能あるいはその病態を早期に知るためそれらの予備能を判定する方法の一つとして,母体にdehyroepiandrosterone sulfate(DHAS)を負荷しその後の血中尿中ステロイド推移を検討し以下の成績を得た。DHAS 50mgを母体に経静脈的に投与L,妊娠末期の正常妊婦における各種steroidの血中%増加率を求めると,DHAS 60分1,000%,120分800%,DHA60分560%,120分290%,androstenedione 60分230%,120分130%となり,またestrogen4分画のうちE_2は60分380%,120分350%,E_4は60分135%,120分330%となり,E_1,E_3にはこれを認めることができなかった.一方尿中total E_3,E_4の濃度推移は特異的で,最初の6時間尿でそれぞれ180%,240%の増加となり,その後24時間で減少し,48〜54時間後再び160%,210%の増加となる2峰性パターンを認めた.よって血中E_2,とE_4,尿中E_3とE_4とをそれぞれ指標とする場合,前者の60分あるいは120分の最大増加率と120分あるいは240分での減衰率,後者のそれの2峰性パターンの有無より各種の異常妊娠例にみる胎児と胎盤との態様あるいは機能を検討すると,低体重児出産例については,1) 血中E_2,E_4増加が正常であり,2) E_2のみ急増と急減,3) E_4の増加率のみが低下し,尿中E_3,E_4に2峰性パターンを認めがたいもの,4) 血中E_3,E_4増加が低いが尿中E_3,E_4に2峰性パターンをみるそれとがあり,これらの症例ではsteroidの生成代謝の面よりそれぞれ,1) 胎児における予備能の低下,2) 胎盤におけるそれと胎児のwell beingの低下,3) 胎児における予備能及びwell beingの低下,4) 胎盤機能の低下にかかわらず胎児の予備能の健存,との各型に区分されるため,本法は胎児・胎盤系機能における予備能,ひいては胎児のwell beingないし予後の判定方法となり,予後を知るための臨床応用が可能となるものと思われる.