著者
吉川 幸造 島田 光生 栗田 信浩 西岡 将規 森本 慎也 東島 潤 宮谷 知彦 宮本 英典 寺嶋 吉保
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.56-60, 2010 (Released:2010-02-02)
参考文献数
17
被引用文献数
5 3

Bevacizumab使用中の手術は創傷治癒遅延のため投与後4∼6週間以降に施行することが推奨されているが,消化管穿孔などでは緊急手術が必要となる.今回,Bevacizumab使用中に緊急手術行った2例を報告する.症例1,50歳代男性.下行結腸癌同時性肝転移肺転移と診断され,腫瘍によるイレウスに対して人工肛門造設術を施行,その後,腫瘍の後腹膜への穿通に対して結腸左半切除術を施行.8日後に腸腰筋膿瘍に対して洗浄ドレナージ術を施行.症例2,70歳代男性.虫垂粘液嚢胞腺癌,腹膜播種と診断され治療を行っていた.消化管穿孔に対して緊急手術を施行.横行結腸に穿孔部が認められたが高度の癌性腹膜炎の状態であり洗浄ドレナージ術を施行し治療した.Bevacizumab使用時において消化管吻合が可能な場合においても吻合を行わず,人工肛門造設による2期的手術を行い,人工肛門閉鎖については,十分なBevacizumab休薬期間と原疾患の進行状況に合わせてその時期を検討する必要がある.
著者
鈴木 友宜 荒井 邦佳 岩崎 善毅 片柳 創 高橋 慶一 山口 達郎 松本 寛 宮本 英典
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.1503-1508, 2004-08-01
被引用文献数
5

症例は45歳の男性で,1986年,発熱,皮疹,リンパ節腫脹にて発症し,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:以下,SLE)と診断された.2003年1月17日より発熱・嘔吐・腹痛を認め,1月24日の腹部CT検査にて,腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔,汎発性腹膜炎と診断し,同日,緊急開腹手術を施行し,壊死した直腸S状部に穿孔を認めた.組織標本より,壊死型虚血性腸炎と診断した.術後,エンドトキシン吸着療法・持続的血液濾過を導入し,集学的治療にて軽決した.自験例のように,SLEに消化管穿孔を伴った症例は,本邦で過去28年間に23例報告されている.なかでも23例中9例が死亡し,そのうち5例が下部消化管穿孔であった.SLEの経過中みられる消化器症状として穿孔はまれではあるが,発症すると致死率は高く,SLE患者が腹部症状を訴えてきた際には,その存在と危険性を十分に理解する必要があると考える.