- 著者
-
松本 恭治
- 出版者
- 国立公衆衛生院
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1995
初期の分譲集合住宅団地では、増加しつつある高齢者が永く安心して住み続けられるためのストック改善と管理の対策が早急に必要となってきた。従って本研究は長期経過した分譲集合住宅における住まい方の変化と個人努力や管理組合による改善や工夫等を分析し、対策に資する資料を得ることを目的とした。平成8年度は居住者対象のアンケート調査と高齢者対策を実施した管理組合へのヒヤリングを行った。居住者を対象に行ったアンケート調査は、(1)団地内・近隣住替えの実態、(2)複数住宅所有と使用変化の実態、(3)親子同居・近居形成・分解の実態、(4)住戸内改善の実態、(5)近隣関係の実態等である。当然ながらこれらは一定程度の期間を経た分譲集合住宅地で見られるものであり、これらを左右する条件として、立地環境、価格、団地戸数規模、団地内の住宅型種類と配分、管理形態、維持保全状況等が上げられた。これら条件を勘案し、調査対象団地は前年度行った4団地(昭和40年代初期分譲団地、東京高島平、横浜ガ-デン山、千葉高洲、花見川団地)を踏まえ、同じく40年代に分譲した2団地(東京亀戸、千葉稲毛ファミール)を選定した。有効回収アンケート票数は合計956票で6団地合計で2539票となった。主な調査結果は以下の通りである。(1)郊外団地、都内団地いずれも最近入居者の所得低下・小規模世帯化が見られるが、特に郊外団地で著しく現れている。(2)近隣住み替え者と遠方からの転入者を比較すると、前者の方が後者より高齢者で通院率が低く、また世帯主・配偶者とも友人が多い。所得は都内では配偶者の常勤率が近隣住み替え者の方が高く従って世帯収入も多くなるが、郊外では近隣・遠方転入者も無職またはパートが多いため、前住地による差はない。(3)複数住宅使用世帯比率は、少数住宅型計画団地で多く、多数住宅型計画団地では少なかった。これは複数住宅型計画団地では内部住み替えが容易なためであった。(4)住宅内リフォーム実施額は世帯収入、世帯主・配偶者の友人数、中古価格、管理組合役員経験有無、住宅面積等と関連が深かった。