著者
島袋 義人 松本 泉 渡久山 竜彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.GbPI2470-GbPI2470, 2011

【目的】理学療法養成校の学生にとって国家試験は、3年又は4年間の学生生活の総括であり、近年では、理学療法士国家試験の難易度が上がり、不合格になる学生が増えている。その為に、国家試験の結果では内定取り消しの学生が出ている状況で、この結果は、学生にとって一生を左右するものである。養成校においては、合格率の高低が養成校の名誉にも関わり、また大きく学生募集にも影響を及ぼす。優秀な学生を確保するために、国家試験の合格率を高く維持することが必要とされる。このような中で我々は、国家試験の合格率を高めるとともに、より質の高い人材を育成するためにも教育方法や指導方法を新たに見出すことを目的とし、第46回理学療法士・作業療法士国家試験、在学中の指定科目成績、学内模擬試験の各成績の統計分析を行い若干の知見を得たのでここに報告する。<BR>【対象】本学院の平成21年度卒業生で第45回理学療法士・作業療法士国家試験を受験した者、内訳は昼間部30名(男性:20名・女子:10名)・夜間部37名(男性:33名・女性:4名)合計67名を対象とした。<BR>【方法】本学院昼間部・夜間部在学中の指定科目で人体の構造・疾病と障害・保健医療とリハビリテーション理念(以下 専門基礎科目)及び基礎理学療法・理学療法評価学・理学療法治療学・地域理学療法(以下 専門科目)計28科目の成績、本学院で作成した国家試験対策の模擬試験12回の結果、第45回の理学療法士・作業療法士国家試験の自己採点結果をそれぞれで回帰分析にて統計分析を行った。<BR>【説明と同意】本研究に際して、対象者には学内成績結果また模擬試験結果、第45回理学療法士・作業療法士国家試験の自己採点の結果を使用については、卒業後同意書文を作成し郵送にて確認し全員から了解を得て行った。<BR>【結果】在学中の専門基礎科目及び専門科目計28科目の結果成績と第45回理学療法士・作業療法士国家試験の結果の回帰分析を行った結果、疾病と障害・基礎理学療法の成績で6.11×10-5と有意な相関を示した。また、本学院で実施した12回の模擬試験と第45回理学療法士・作業療法士国家試験の結果をそれぞれ回帰分析を行った結果、第2回と第10回の模擬試験の結果に9.21×10-8と有意な相関を示した。<BR>【考察】理学療法士養成施設指定科目の疾病と障害と基礎理学療法と国家試験の結果にそれぞれの間で有意な相関を示した。疾患と障害は近年の国家試験出題問題を確認すると文章による症例問題の出題傾向が多く、その為、各疾患を確り理解していないと解けない傾向にあると考えられ、文章からの症例を読み取る能力も問われている。基礎理学療法と国家試験の結果では、症例に対してのそれぞれの検査測定の方法からの分析を理解し文章から読み取る能力が要求される傾向にある。その為、学内の成績が国家試験の高得点を取る為に大きく反映されると考えられる。<BR> 模擬試験と国家試験の結果に有意な相関を示したのは、模擬試験の内容は過去問題を変更せずに出題した試験もあり、又過去問題を年代ごとに組み替えて作成した試験等を実施しました。その中で相関を示した模擬試験は、第2回と第10回の模擬試験と国家試験結果で有意な相関を示した。その問題は過去問題の組み替えせずに出題し、その時の結果が平均点より低い者は国家試験の点数に影響を及ぼす傾向にあった。結果から判断すると過去問題を初期の段階及び最終段階の時期にきても平均点に到達していない者は、大きく国家試験に影響を与える傾向にある。以上のことを踏まえて、学内では的確な基礎教育を積極的に指導し、模擬試験の段階では、初期及び中間、最終時の到達度が70%程度に到達していないものに関しては、初期及び中間の段階で到達度の確認を行う事で早期に本人の弱点を個別指導で行う事が出来、その時期の確認指導が合否に繋がり学生自身も時間的余裕が生まれ結果的に合否に結びつけると考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】理学療法養成校の大きな目的として国家試験合格があり、これに対して学内で各科目が国家試験の影響度合いを把握することで学生教育に活かせる研究と考える。また、全国的に理学療法士養成が増えている中で、優れた知識、技能、態度を、身につけた理学療法士を育てる事が養成校としての責務として考えており、質の高い理学療法士を育成することが社会貢献を成し地位向上に繋がると考えられる。