著者
松村 文人
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.80-90, 2015-01-25 (Released:2018-02-01)

戦後日本では,企業経営者と企業内労働組合が行う企業内交渉の他に,統一交渉,集団交渉,連合交渉,対角線交渉と呼ばれる交渉形態が存在した。これらの交渉では,産業別労使団体が企業の枠を超えた労使交渉の主体として交渉や妥結に関与した。産業別労使団体が関与して企業横断的に展開され,賃上げに関する何らかの統一的な合意が形成された交渉を産業レベル交渉と呼ぶこととする。論文では,6産業(私鉄,石炭,ビール,繊維,金属機械,海運)の産業レベル交渉を対象に,交渉成立の条件,展開の諸相,後退・終了の経緯に関して総括的な考察を行う。また,産業レベル交渉の展開を背景に,企業別組合から産業別組合への移行を構想した私鉄,ビール両組合の事例を取り上げ,産別化挫折の原因をさぐる。日本との比較対象国として,産別交渉の伝統をもつ欧州大陸諸国と,1990年代から産別化に着手し,2000年代より産別交渉を展開する韓国を念頭に置く。