著者
松村 理恵子 岩田 美千代 澤田 愛子
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.77-84, 2001-08

本研究では, 看護婦と末期患者のコミュニケーションの課題を考察するために, 末期患者とのコミュニケーション場面における看護婦の感情を明らかにすることを目的とした.その結果, 看護婦の感情は《事実を知っている緊張感》, 《患者の人生に影響を与える責任の重み》, 《思いを共有できないつらさ》, 《何もできない申し訳なさ》, 《看護の手ごたえのなさ》, 《余裕のなさ》, 《責められることへのやるせなさ》, 《患者の心の中に入る怖さ》の8つに分類された.さらにターミナルケアに関わる看護婦は, 末期医療の特殊性から, 患者と同じ目標をもつことが難しいことを悩んでおり, また, 看護婦の無力感, 自信のなさなどから, ひとりの人間として患者と関わることが困難であることがわかった.これらのことから, 末期患者とのコミュニケーションの課題として, 末期医療の厳しい現実を正しく見つめた上で, まず自分のいかなる感情も自分のものとして受け入れ, さらに自分を価値ある人間として認めることが重要であると考えられた.