著者
原田 晋 松永 亜紀子 宮地 里江子 正木 太朗 森山 達哉
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1515-1521, 2007-12-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
20

【目的】スパイスアレルギーは特に北欧諸国からは多数の報告が認められるが,本邦での報告は稀である.今回,当科で経験した2症例に対して諸検査を施行し,本症の発症機序に関する考察を加えた.【方法と対象】臨床経過からセリ科スパイスアレルギーと考えられた2症例に対して,花粉類・食物類の特異的IgEの測定,スパイス類・セリ科野菜類のプリックテスト・Immunoblotを施行した.但し,症例1 32歳男性では花粉症の既往はなく,症例2 46歳女性は春夏秋を通して花粉症症状を有していた.【結果】症例1では花粉類の特異的IgEは弱陽性のみ.Immunoblotは10〜12kDaおよび60kDaの部位で陽性.症例2では多数の花粉類の特異的IgEが陽性.Immunoblotは14kDaおよび60kDaの部位で陽性.プリックテストは2症例共にセリ科のスパイス類で強陽性を示し,セリ科のスパイスアレルギーと診断した.【結論】以上の結果より,症例1はスパイス自体の感作によるクラス1アレルギーを,症例2は花粉類との交叉反応により発症したクラス2アレルギーを疑った.本症には,このように複数の発症機序が存在するのではないかと推測される.本邦においても,今後スパイスアレルギーの発症が増加する可能性も考えられ,注目すべきアレルゲンである.