著者
松永 安由 松本(高木) 来海 山下 舞亜 森(木津) 久美子 廣瀬 潤子 冠木 敏秀 酒井 史彦 成田 宏史
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.105-113, 2019 (Released:2019-06-14)
参考文献数
27

乳児の経口免疫寛容の誘導に関して母親へのプロバイオティクス投与の有効性が報告されている。本研究では, 母親マウスにLactobacillus gasseri SBT2055 (LG2055) と食物抗原を同時に投与し, その母乳で育った仔マウスの免疫寛容応答に与える影響を評価した。雌マウスにカゼイン食 (C群) , 卵白食 (E群) , 卵白+LG2055食 (E+LG群) を交配前から離乳まで摂取させ, 仔マウスには離乳後にオボアルブミン (OVA) を抗原としたアレルギー性下痢誘発試験を行った。その結果, 仔マウスの下痢発症率はE群に比べてE+LG群で有意に低下した。また, LG2055を投与した母親マウスの母乳中の総IgA濃度とOVAと特異的IgAの免疫複合体 (IgA-IC) 濃度が有意に増加した。以上より, 母親のLG2055摂取は仔マウスの経口免疫寛容を増強した。この増強には母乳中のIgA-ICが関与することが示唆された。
著者
松永 安由 木津 久美子 有田 真緒 廣瀬 潤子 成田 宏史
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.21-28, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

雌マウスをカゼイン餌で飼育し, オボアルブミン (OVA) と水酸化アルミニウムゲル (Alum) で腹腔免疫してアレルギー感作させた後交配し, 授乳期間中のみ卵白餌を与えた母親をAllergy Egg (AE) 母とした。OVAで感作せずに交配し, 授乳期間中のみ卵白餌を与えた母親をEgg (E) 母, 授乳中もカゼイン餌を与え続けた母親をMilk (M) 母とした。各々の母親に母乳哺育された仔を離乳後OVAとAlumで腹腔免疫し, OVAの経口投与によるアレルギー性下痢誘発試験を行ったところ, AE・E仔ではM仔に比べて下痢が抑制された。さらに, 血清中OVA特異的IgE, 脾臓細胞培養液中IL-4も有意に低かった。また, AE母乳中にIgAおよびIgG1とOVAとの免疫複合体が有意に増加していた。以上の結果より, 母親がアレルギー感作を受けていても, 母親が摂取したタンパク質特異的に母乳を介した経口免疫寛容が仔に誘導されること, その過程に母乳中のOVA免疫複合体が関与している可能性が判明した。