著者
真鍋 勝 松浦 愼治
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.275-279, 1972-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1 7

みそ仕込みの時点にアフラトキシンが混入していた場合,みそ醸造中にはたしてアフラトキシンが分解されるか否かについて検討を加えた。(1) みそ醸造中のアフラトキシンの分解を調べる場合の基礎的実験として,水素イオン濃度の違いによるアフラトキシンの分解を調べた結果,アフラトキシンB1, G1ともにpH 4~5の範囲で安定であり,pH 1とpH 9~10でよく分解していた。pH 1~3においては,アフラトキシンB1とG1はそれぞれアフラトキシンB2aとG2aに変わることがわかった。(2) 全国各地より集めた種々のタイプのみそ95点についてpHを調べた結果,大部分がpH 4.6~5.4の間に入っており,水素イオン濃度によるアフラトキシンの分解は考えられないことがわかった。(3) みそ醸造中の添加したアフラトキシンの分解試験結果では,アフラトキシンB1とG1は醸造の初期に分解が認められるが,その後の分解は少なかった。またアフラトキシンB2とG2については,ほとんど分解が認められなかった。以上のことより,みその仕込み段階にアフラトキシンが混入した場合,みその醸造中には完全に分解されることはないことがわかった。