著者
松浦 晴美 本多 留美
出版者
日本コミュニケーション障害学会
雑誌
コミュニケーション障害学 (ISSN:13478451)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.41-46, 2005-04-30 (Released:2009-11-19)
参考文献数
5

介護老人保健施設(老健)等に勤務するSTは増加の一途をたどっているが,そうした場でのST業務のガイドラインは確立されていない.老健等のSTに対し2004年に小規模な調査を行った結果から,自分達の役割を病院のSTとは異なるものとして積極的にとらえている一方,さまざまな悩みを抱えている姿が見えた.本稿では,養成校を卒業したてのSTが老健に就職し,卒業校の教員達のスーパーバイズを受けながら,老健でのSTの役割や業務を模索していくようすを報告する.老健での経験を通じて,STの役割を「生活の場でのコミュニケーション,QOLの向上に関わる」「個人に合ったコミュニケーション環境を整える」「認知症の方への評価やアプローチを行う」「スタッフ,家族,地域住民にコミュニケーション障害への認識を高める働きかけを行う」と考えるようになった.こうした視点は,生活を軸にした新しいリハビリテーションの概念と通じるものである.