著者
吉畑 博代 本多 留美 沖田 啓子 綿森 淑子
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉短期大学紀要 (ISSN:13420070)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.129-135, 1999-03

音声言語の表出が困難な重度失語症者のために, コンピュータ上で視覚シンボルを操作して文を伝達する視覚的コミュニケーションシステムを作成した。このシステムには検索を行うためのボタンとして, 動作主を表す「人々」ボタンと, 名詞や動詞を表す「名詞」, 「動詞」ボタンを設置し, 「名詞」中のシンボルはC-VIC(Computerized Visual Communication System, Steeleら;1989など)の考えを参考に, カテゴリーごとに階層構造をなすよう構成した。文構成は各ボタンを開いて適切なシンボルを選択し, コンピュータ画面中央に配置した文構成場所に順序よく配列する方法で行うことにした。その結果, 本システムは(1)重度失語症者の文構成の学習手段, (2)AAC(Augmentative & Alternative Communication)として利用することが可能になった。今後本システムを重度失語症者に適用して, 学習手段ならびにAACとしての有効性について検討する。
著者
松浦 晴美 本多 留美
出版者
日本コミュニケーション障害学会
雑誌
コミュニケーション障害学 (ISSN:13478451)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.41-46, 2005-04-30 (Released:2009-11-19)
参考文献数
5

介護老人保健施設(老健)等に勤務するSTは増加の一途をたどっているが,そうした場でのST業務のガイドラインは確立されていない.老健等のSTに対し2004年に小規模な調査を行った結果から,自分達の役割を病院のSTとは異なるものとして積極的にとらえている一方,さまざまな悩みを抱えている姿が見えた.本稿では,養成校を卒業したてのSTが老健に就職し,卒業校の教員達のスーパーバイズを受けながら,老健でのSTの役割や業務を模索していくようすを報告する.老健での経験を通じて,STの役割を「生活の場でのコミュニケーション,QOLの向上に関わる」「個人に合ったコミュニケーション環境を整える」「認知症の方への評価やアプローチを行う」「スタッフ,家族,地域住民にコミュニケーション障害への認識を高める働きかけを行う」と考えるようになった.こうした視点は,生活を軸にした新しいリハビリテーションの概念と通じるものである.
著者
本多 留美 綿森 淑子
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.83-99, 2007-03
被引用文献数
1

人口の高齢化や介護保険サービス分野での雇用の増加によって、言語聴覚士(ST)が認知症の人とかかわる機会は増えている。そこで現任のST129名に調査票を送付し73名から回答を得て、認知症の人へのかかわりの頻度や内容などの実態、および今後のあり方についての意見を集約した。かかわりの頻度については、認知症をともなう例は言語聴覚療法の対象者にも多く、STが認知症の人とのかかわる頻度は高かった。内容については、「摂食・嚥下面の評価」が業務量・重要性の両者において最も高かった。今後のSTのかかわり方として、認知症にともなうコミュニケーションや生活上の障害にもかかわるのがよいという意見が多かった。STが認知症の人に広い範囲で適切にかかわるためには、認知症について学べる機会を増やし、障害特性に合った評価や介入の方法を開発するとともに、自らの役割についてST自身が自覚し、開拓する姿勢も重要と考えた。原著国立情報学研究所で電子化