著者
松澤 宏朗 田中 靖浩 森 一博
出版者
日本水処理生物学会
雑誌
日本水処理生物学会誌 = Journal [of] Japan Biological Society of Water and Waste (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.129-136, 2010-09-15
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では、ウキクサ根圏より分離した11種の菌株のウキクサ根への付着性を検討し、その中から3菌株を用いて、それら菌株の環境水中におけるウキクサ根圏での残存性を検討した。まずウキクサ根への付着性に関して、無菌ウキクサ根圏へ11種の菌株を導入し、根圏で優占的に生息する菌株について検討した結果、<i>Asticcacaulis</i> sp. RS59G株が菌株導入後7日目において最優占種となった。また、この菌株はボルテックス処理(3000 rpm, 3 s)による剪断圧の負荷にも抵抗可能なウキクサ根への付着能を有していた。その後、<i>Asticcacaulis</i> sp. RS59G株を含む3菌株に、カナマイシン耐性を有するpBBR122をマーカープラスミドとして導入し、得られた遺伝子組換え菌株の無菌ウキクサ根への定着性を検討した。その結果、他の2菌株と比較して<i>Asticcacaulis</i> sp. RS59G:pBBR122株は非常に多くの生菌数を無菌ウキクサ根圏において維持可能であることが明らかとなった。その後、環境水中の複数の微生物共存下における3菌株のウキクサ根圏での消長を調べた。その結果、7日間の実験期間にわたって、いずれの遺伝子組換え株もウキクサ根圏に汚染物質の浄化が可能な生菌数で残存可能なことが明らかとなった。特に、<i>Asticcacaulis</i> sp. RS59G:pBBR122株は、残存性試験初期において非常に多くの生菌数でウキクサ根圏に生息可能であった。