著者
吉岡 一男 松田 利通 Kazuo Yoshioka Toshimiti Matsuda
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of The Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
no.32, pp.117-125, 2014

われわれは、おうし座RV型変光星の化学組成の異常を説明する3つの説の当否を決めるため、2個のおうし座RV型変光星、AC HerとRV Tauを観測し、これらの星の化学組成を求めた。 観測は、県立ぐんま天文台の150cm反射望遠鏡に取り付けたエッシェル分光器を用いて行い、解析は吉岡が作成したプログラムを用いて、太陽を比較星とする一種の相対成長曲線法で行った。整約はソフトアウェアIRAFを用いて行った。 そして、次の結果が得られた。1) 両星とも太陽に相対的な元素量は、散らばりは大きいが、凝縮温度と相関関係を示し、[M/H]の値は凝縮温度が高いほど少ない。この結果は、両星ともダスト・ガス凝縮が働いていることを示してる。2) 上述の相関は、AグループのRV Tauの方がBグループのAC Herよりも顕著である。これは、Bグループの星にはダスト・ガス凝縮が見られるが、Aグループの星には明確には見られない、というGiridhar et al.( 2000)18)の結果に反する。3) AC HerとRV Tauの[S/H]と[Zn/H]の値によれば、2)の結果は、もともとの[Fe/H]の値が-1よりも小さなpost-AGB星はダスト・ガス凝縮の影響を受けない、というGiridhar et al(. 2000)18)の結果には反しない。4) 両星とも相対的な元素量が各元素の第1電離ポテンシャルと相関関係が見られず、第1電離機構が働いていないことを示している。5) 両星とも相対的な元素量が各元素の第2電離ポテンシャルと相関関係が見られず、第2電離機構が働いていないことを示している。 以上の結果を確認するために、成長曲線法の異なる方式で再解析することが望まれる。