著者
大出 春江 中村 美優 松田 弘美 古川 早苗
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成19年度は過去3年間の研究成果をまとめる形で、定例研究会の実施、学会報告、報告書の作成を行った。また在宅医療をめぐる全国大会が開催され、このうち千葉、東京、岐阜、大阪の大会に参加し、在宅医療にかかわる専門職者らと交流を深めた。以下は、学会発表と報告書の骨子でもある研究成果を担当毎に要約したものである。1)在宅の看取りと家庭看護の歴史(大出):明治期から現代までおよそ100年間の在宅の看取りの変遷について、家庭看護書の記述をもとに明らかにした。1960年代前後から、死にゆく身体への関わりは看護職にゆだねられる経過が示される。2)死後処置からみた看取りの歴史と担い手(古川):明治期の看護職による死後処置が伝染病対策からはじまり、そこに民俗慣習の儀礼が組み込まれていった経過が看護教科書等の文献研究から示される。さらに近年、急速な広がりをみせる〈エンゼルメイク〉のもつ効果と危うさについても触れ、死後処置の行方を論ずる。3)看取りを実践した家族からみた在宅医療と訪問看護(中村):看取りを実践した兵庫県・家族7例に対し、主介護者を対象に実施した半構造化インタビュー調査(2004年12月〜2006年8月実施)結果の分析。看取る家族からみた病院、疾師、訪闇看講師、存宅疾療に必藝た俗源やネットワークの必要性が明らかにされる。4)長野市訪問看護ステーションからみる在宅医療と訪問(松田):長野市内4カ所の訪問ステーションにおける調査をもとに、訪問看講STが病院併設型の場合、病院との円滑なコミュニケーションと情報の共有により、在宅療養の患者および患者家族の<ゆれ>を支える構造的な基磐を提供していることが示きれた。5)在宅医療という経験と運動(大出):長野県、兵庫県、大阪府にそれぞれ在宅医療を実践する無床診療所を開設する医師ヘのインタビュー調査から、2006年度在宅療養支援診療所という新たな制度の導入と受容を医師の視点から捉えている。