著者
松田 治貴 河﨑 俊博 中田 行重
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床センター
雑誌
関西大学心理臨床センター紀要
巻号頁・発行日
vol.13, pp.57-65, 2022-03-15

本研究の目的は、現在の心理療法の業界においてPCAがどのように認知されているのか、その実態を調査し、PCAの課題や今後の展開について検討することである。PCAの現状について感触を得るための概括的な調査研究と位置づけて調査を実施した。調査対象は、心理療法の学派を問わず、臨床心理士、公認心理師といった心理臨床にかかわる支援者を対象とし、無記名方式のWEB調査を実施した。32名(女性20名、男性12名)から調査協力が得られ、PCAの認知度や活用に関する質問項目について回答を求めた。得られた回答からは次のことが考察された。まず、臨床現場や大学院教育において、PCAの実践内容や重要性は、職場領域や業務内容、学派を問わず広く認知されていることが示唆された。次に、PCAの概念理解について検討した結果、「中核3条件」や「受容と共感」のような基本的概念の理解が大半であり、その他の理論については認知度が低いことが示唆された。また、PCAの学習機会の少なさによる知識のアップデート不足、PCAの概念を他者へ伝えるための説明言語と伝達手段の確立、PCAを専門とする心理療法家だけでなく、他学派の心理療法家に対する学習機会の提供などの必要性について考察した。