- 著者
-
松田 泰斗
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2013-04-01
学習・記憶に重要な役割を果たす成体海馬ニューロンは、海馬神経幹/前駆細胞から恒常的に生涯に渡り新しく産生され続けることがわかっている。しかし、うつ、老化、虚血、てんかん発作など様々な病態下においては、この恒常的なニューロン新生が破綻し、脳高次脳機能に悪影響を及ぼすことが知られる1)。例えば、てんかん発作後の海馬では、神経幹/前駆細胞の増殖が亢進するとともに、異所性かつ形態・機能が異常なニューロンの新生が誘発される(図1A)2)。産生された異所性ニューロンは正常なニューロンの機能をも阻害してしまうことで、空間認識記憶の低下を招くことやてんかん再発作に関与することがわかっている。しかし、これまで、生体がこのようなニューロン新生恒常性の破綻をどのように防ごうとしているのかは詳しく分かっていない。今回われわれは、ミクログリアに発現する自然免疫受容体TLR9を解析し、内因性リガンドによって活性化されたTLR9シグナルがてんかん発作依存的な異常ニューロン産生を抑制することを突き止めた。また、このような生体が有する異常ニューロン産生抑制機構は、てんかん発作による学習・記憶能力の低下や再発作の程度を緩和することに貢献していることがわかった。