著者
重久 喜哉 松葉 智之 上田 英昭 緒方 裕樹 井本 浩
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.157-161, 2018-07-15 (Released:2018-08-09)
参考文献数
4

乳幼児の僧帽弁疾患で僧帽弁形成術が困難な症例では僧帽弁置換術(MVR)が必要となるが,弁輪より過大な人工弁を用いてMVRを行うためには大きさの違いを解消するための工夫を要する.今回われわれはSungらの方法を参考にし,expanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)graftを人工弁のスカートとして使用した弁輪上部僧帽弁置換手術(Supra-annular MVR)を2例の乳幼児に施行した.症例1は1歳4カ月,6.7 kg,Shone症候群,僧帽弁狭窄症,パラシュート僧帽弁,大動脈縮窄症,心室中隔欠損症の男児.大動脈縮窄症修復術,心室中隔欠損閉鎖術後に僧帽弁狭窄症が顕在化しMVRを行った.症例2は5カ月,4.9 kg,多脾症,中間型房室中隔欠損症,左側房室弁閉鎖不全症の女児.3カ月時に心内修復術を行ったが,術後徐々に左側房室弁狭窄兼閉鎖不全症が進行し弁置換術を施行した.いずれの症例も術後の人工弁機能は良好であり,今回行った方法によるSupra-annular MVRは乳幼児の狭小な僧帽弁輪に対し有用な手術手技と考えられた.