著者
加藤 博之 松谷 秀哉 大沢 弘 中根 明夫
出版者
弘前大学21世紀教育センター
雑誌
21世紀教育フォーラム
巻号頁・発行日
vol.9, pp.27-33, 2014-03-31

【背景と目的】医学部医学科1 年生に対し、入学後のモチベーションの低下を防ぎ、医師のプロフェッショナリズムを意識させながら、能動的な学習姿勢を涵養する教育方法は、未だ確立されたものがない。本学では1 年次に「臨床医学入門」の授業を行なって、この問題への対応に努めているが、その一環として行われたワークショップ授業と教育効果について報告する。【対象と方法】1 年生を対象とし、平成21年度より開講している科目「臨床医学入門」の一環として6 月にワークショップを実施した。学生を小グループに分け、まず附属病院内の七夕飾りとして、患者・家族が願い事を書いた短冊を見せた。その後「患者さんの願いと医師が果たすべき役割」をテーマとして、KJ 法を用いてプロダクトを作成し、全員の前で発表した。更に自由記載形式のアンケートで、ワークショップの感想を記載してもらった。【結果】プロダクトにまとめられた学生たちの意見は、患者・家族の願いは想像以上に多様であり、また医師や医療に対する期待は大きく、切実な思いを痛感したとするものが多かった。アンケートでは、患者・家族の期待に応えるための努力の必要性、高い目的を持ち真剣に学ぼうとしている仲間への尊敬、グループワーク自体が将来のチーム医療の練習であるなど、医師を目指す上での認識を新たにしているものが多かった。【結論】1 年生に患者・家族の医療に対する思いを情報として伝え、かつ同級生同士討論することは、医師の社会的役割を改めて認識させると同時に、学習に対する有力な動機付けとなりうる
著者
加藤 博之 松谷 秀哉 小林 只 大沢 弘
出版者
弘前大学21世紀教育センター
雑誌
21世紀教育フォーラム
巻号頁・発行日
no.11, pp.31-37, 2016-03-31

【背景と目的】医学部1 年生に対し、入学後のモチベーションの低下を防ぎ、能動的な学習姿勢を修得させ、さらに医師のプロフェッショナリズムを涵養する教育方法は、未だ確立されたものがあるとは言い難い。本学では1 年次に「臨床医学入門」の授業を通年で行なって、この問題への対応に努めており、本稿では本科目の全体像について報告する。【対象と方法】1 年次学生を対象とし、平成21年度より開講している科目「臨床医学入門」は毎週水曜の午後行われる。教育方法は講義、実習、演習(ワークショップ)など多岐にわたる。授業内容としては、(1)「こんな医師になりたい」をテーマに作文を書き、同級生全員の前で自己紹介を兼ねて発表、(2)「患者さんの願いと医師が果たすべき役割」をテーマとしたワークショップ、(3)「弘前大学医学部の歩みとこれから」の講義、(4)アーリーエクスポージャー、(5)地域医療の最前線の医師による講義「現場の医療を知ろう」、(6)コミュニケーション実習「模擬患者さんと話してみよう」、(7)地元について知る講義「津軽学」、(8)まとめのワークショップ、などから成っている。これらの教育内容はいずれも、Intrapersonal professionalism、Interpersonalprofessionalism、Public professionalismの涵養に通じるものである。これらは医師になる者の基本であり、特に本学学生の約半数を占める地域枠入学者のPublic professionalismの修得は重視されている。【結論】プロフェッショナリズムの涵養に焦点を当てた初年次教育は、長期的な効果が期待できる。