著者
吉岡 伸 松野 明子
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.45-51, 1993-11-30

1989年より4回にわたって、精神遅滞児におけるひらがな文字(71字)の読み能力と身近な名詞の音韻抽出及びいくつかの知覚課題の能力を測定した。対象児は精神薄弱養護学校に在籍する児童・生徒であり、1989年においては51名、1990年においては39名、1991年においては32名、1992年においては26名である。読み能力の成績はU字型の分布、すなわち「殆ど読めない」集団と「よく読める」集団に分かれた。読み能力に対してそのほかの三つの諸能力はそれぞれ有意な相関を示し、ひらがな読みの習得に一定の影響を持つことを示唆した。初年度(1989年)と最終年度(1992年)との各テストを比較すると、読み、音節分解、音韻抽出の各能力は3年間にわずかであるが伸びを示したが、知覚関連の成績はあまり変化しなかった。精神遅滞児における読みとその他の能力の関連のしかたについて考察した。