著者
吉岡 伸也
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.86-95, 2008 (Released:2008-10-16)
参考文献数
46
被引用文献数
2 2

青いモルフォチョウを代表例とする構造色, その輝きは古くから科学者達の注目を集めてきた。光学顕微鏡で詳しい観察がされた時代の後, 20世紀中頃に電子顕微鏡が開発されると構造色研究は大きく進展した。輝きの背後にある緻密な微細構造が次々と明らかにされたのである。その構造には波長サイズの周期性が見られたため, 光の波としての性質である“干渉”が, 波長選択的な反射に寄与していることが確かになった。しかし, 自然界の構造色は, 微細構造だけで語ることはできない。もっと大きなサイズの形状や色素の併用など, 総合的な発色の工夫を生物は持っているのである。蝶や蛾の鮮やかな翅の発色の仕組みを紹介しながら, 構造色研究の現状と今後の方向性について考えてみたい。
著者
吉岡 伸也 木下 修一
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.619-623, 2009-08-05

タマムシを始めとして,昆虫や鳥など多くの生物が輝きのある鮮やかな色を持っている.これらの色は構造色と呼ばれ,自然界のフォトニック材料とでも呼ぶべき微細な構造体にその起源がある.近年のフォトニクス研究の高まりに呼応するように,生物の構造色は再び注目を集め,微細構造が示す光学特性はもちろんのこと,波長よりもはるかに大きい構造や視覚との対応をも利用した,総合的な発色の仕組みが明らかになりつつある.
著者
吉岡 伸 松野 明子
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.45-51, 1993-11-30

1989年より4回にわたって、精神遅滞児におけるひらがな文字(71字)の読み能力と身近な名詞の音韻抽出及びいくつかの知覚課題の能力を測定した。対象児は精神薄弱養護学校に在籍する児童・生徒であり、1989年においては51名、1990年においては39名、1991年においては32名、1992年においては26名である。読み能力の成績はU字型の分布、すなわち「殆ど読めない」集団と「よく読める」集団に分かれた。読み能力に対してそのほかの三つの諸能力はそれぞれ有意な相関を示し、ひらがな読みの習得に一定の影響を持つことを示唆した。初年度(1989年)と最終年度(1992年)との各テストを比較すると、読み、音節分解、音韻抽出の各能力は3年間にわずかであるが伸びを示したが、知覚関連の成績はあまり変化しなかった。精神遅滞児における読みとその他の能力の関連のしかたについて考察した。
著者
木下 修一 吉岡 伸也 藤井 康裕
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.493-499, 2002-10-20 (Released:2012-11-20)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2
著者
谷本 道哉 吉岡 伸輔 瀬戸口 芳正 平島 雅也
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.31, pp.31-45, 2013-03-01

[要旨] 背景: 野球投球時の肩関節まわりの発揮トルク・稼働範囲と肩・肘関節まわりの傷害との関連が示唆されているが, その詳細は明らかではない. 目的: 野球投球動作時の肩関節周りの発揮トルクおよび稼働範囲,また肩関節周りの等尺性最大筋力および静的可動域の傷害発症リスクとの関係を明らかにする. 方法: 大学男子硬式野球部に所属する投手12名を用いて, 投球動作時の肩関節周りの発揮トルク(内旋,水平内転), 稼働範囲(外旋,水平外転)を逆動力学より算出した.また肩関節周りの等尺性最大筋力と静的関節可動域の測定を行った.以上の測定項目と,肩・肘関節まわりの傷害発症リスク指標(肩関節引張力,せん断力,肘関節外反トルク)との関係の評価を行った. なお, 力の要素は球速の2乗で除して標準化したものを評価に用いた結果:投球時の発揮トルクと傷害リスク指標との関係は,肩関節内旋トルクは肘関節内反トルクと有意な正の相関(P<0.001)を,肩関節水平内転トルクは肩関節せん断力と有意な正の相関(P<0.001)を示した投球時の関節稼働範囲と傷害リスク指標との関係は, 投球時の肩関節外旋稼働範囲は肘関節内反トルクと有意な負の関(P<0.05)を,投球時の肩関節水平外転稼働範囲は肩関節せん断力と有意な負の相関(P<0.001)を示した. 投球時の肩関節の発揮トルク(肩関節内旋,水平内転の和)の大きい上位6名の「上半身パワータイプ」は,下位6名の「非上半身パワータイプ」よりも肘関節内反トルクが大きい傾向(P<0.1),肩関節せん断力は有意に高値(P<0.05)であった.結論:肩関節周りの発揮トルクを強く使う投手のほうが,また肩関節周りの稼働範囲が小さい投手のほうが肩・肘回りの傷害発症リスク指標が高くなるという関係が観察された.上肢の発揮トルク主動ではない投法,また肩関節周りの大きな稼働範囲を使った投法が, 肩・肘関節まわりの傷害リスクを軽減するという点において優れることが示唆される. [Abstract] Background: Shoulder joint torque and motion range in baseball throwing are considered to have relation with the risk of shoulder and elbow injury. Purpose: The purpose of this study is to investigate the relation among shoulderjoint torque and motion range in baseball throwing, shoulder isometric muscle force and static motion range, and the risk of shoulder and elbow injury. Method: Twelve baseball pitchers affiliated with the baseball club of the University performed maximum speed ball pitching with motion capture kinematics and kinetics analysis, isometric muscle force tests of shoulder inner rotation, and motion range tests of shoulder external rotation and horizontal abduction. The relation among the kinetic characteristics of throwing, the physical characteristics, and the risk of shoulder and elbow injury was investigated Result: Shoulder inner rotation torque in throwing has strong correlation with elbow inversion torque (P<0.001). Shoulder horizontal adduction torque in throwing has strong correlation with shoulder shear force (P<0.001).Motion range of shoulder external rotation in throwing has correlation with elbow inversion torque (P<0.05). Motion range of shoulder horizontal abduction in throwing has strong correlation with shoulder shear force (P<0.001)."Upper arm power type group" defined as the top six subjects with large upper arm torque (amount of shoulder inner rotation and horizontal adduction) in throwing have larger elbow inversion torque (P<0.1) and larger shear force (P<0.05). Conclusion: These results suggested that throwing motion without strong upper arm torque and with larger shoulder motion range decrease the risk of shoulder and elbow injury in throwing.
著者
大栗 聖由 上原 一剛 池亀 彰茂 小河 佳織 樋本 尚志 前垣 義弘 吉岡 伸一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.342-348, 2022-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
17

本研究では,鳥取県の一般診療所における生理機能検査を担当する臨床検査技師(以下,検査技師)の実態調査と将来の検査技師雇用についてアンケート調査を行い,一般診療所における検査技師の現状を明らかにすることを目的とした。アンケート調査票を鳥取県に所属する421施設の一般診療所に送付した。アンケート内容は雇用状況,生理機能検査の担当職種,実施項目,実施項目ごとの月平均検査件数,将来検査技師の雇用予定について質問した。返信があった115施設中,生理機能検査実施施設は102施設存在した。そのうち,8施設(7.8%)で検査技師が生理機能検査を担当していた。検査技師雇用施設での超音波検査における月平均検査数は,検査技師雇用のない施設と比較し有意に多かった(p < 0.001)。また,超音波や脳波,そして筋電図検査件数が多いほど,検査技師が雇用されている傾向であった。調査項目と技師の雇用状況を視覚的に解析できるコレスポンデンス解析を行い,検査技師雇用を検討している施設では,PSG検査件数が多い傾向であった。一般診療所での生理機能検査を生業とする検査技師の必要性が高まれば,医療の質や量について地域格差が示されている今日,生理機能検査の質と量を担保することに貢献できるのではないかと考えられた。
著者
谷本 道哉 吉岡 伸輔 瀬戸口 芳正 平島 雅也 Tanimoto Michiya Yoshioka Shinsuke Setoguchi Yoshimasa Hirashima Masaya
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.31-45, 2013-03-01

[要旨] 背景: 野球投球時の肩関節まわりの発揮トルク・稼働範囲と肩・肘関節まわりの傷害との関連が示唆されているが, その詳細は明らかではない. 目的: 野球投球動作時の肩関節周りの発揮トルクおよび稼働範囲,また肩関節周りの等尺性最大筋力および静的可動域の傷害発症リスクとの関係を明らかにする. 方法: 大学男子硬式野球部に所属する投手12名を用いて, 投球動作時の肩関節周りの発揮トルク(内旋,水平内転), 稼働範囲(外旋,水平外転)を逆動力学より算出した.また肩関節周りの等尺性最大筋力と静的関節可動域の測定を行った.以上の測定項目と,肩・肘関節まわりの傷害発症リスク指標(肩関節引張力,せん断力,肘関節外反トルク)との関係の評価を行った. なお, 力の要素は球速の2乗で除して標準化したものを評価に用いた結果:投球時の発揮トルクと傷害リスク指標との関係は,肩関節内旋トルクは肘関節内反トルクと有意な正の相関(P<0.001)を,肩関節水平内転トルクは肩関節せん断力と有意な正の相関(P<0.001)を示した投球時の関節稼働範囲と傷害リスク指標との関係は, 投球時の肩関節外旋稼働範囲は肘関節内反トルクと有意な負の関(P<0.05)を,投球時の肩関節水平外転稼働範囲は肩関節せん断力と有意な負の相関(P<0.001)を示した. 投球時の肩関節の発揮トルク(肩関節内旋,水平内転の和)の大きい上位6名の「上半身パワータイプ」は,下位6名の「非上半身パワータイプ」よりも肘関節内反トルクが大きい傾向(P<0.1),肩関節せん断力は有意に高値(P<0.05)であった.結論:肩関節周りの発揮トルクを強く使う投手のほうが,また肩関節周りの稼働範囲が小さい投手のほうが肩・肘回りの傷害発症リスク指標が高くなるという関係が観察された.上肢の発揮トルク主動ではない投法,また肩関節周りの大きな稼働範囲を使った投法が, 肩・肘関節まわりの傷害リスクを軽減するという点において優れることが示唆される. [Abstract] Background: Shoulder joint torque and motion range in baseball throwing are considered to have relation with the risk of shoulder and elbow injury. Purpose: The purpose of this study is to investigate the relation among shoulderjoint torque and motion range in baseball throwing, shoulder isometric muscle force and static motion range, and the risk of shoulder and elbow injury. Method: Twelve baseball pitchers affiliated with the baseball club of the University performed maximum speed ball pitching with motion capture kinematics and kinetics analysis, isometric muscle force tests of shoulder inner rotation, and motion range tests of shoulder external rotation and horizontal abduction. The relation among the kinetic characteristics of throwing, the physical characteristics, and the risk of shoulder and elbow injury was investigated Result: Shoulder inner rotation torque in throwing has strong correlation with elbow inversion torque (P<0.001). Shoulder horizontal adduction torque in throwing has strong correlation with shoulder shear force (P<0.001).Motion range of shoulder external rotation in throwing has correlation with elbow inversion torque (P<0.05). Motion range of shoulder horizontal abduction in throwing has strong correlation with shoulder shear force (P<0.001)."Upper arm power type group" defined as the top six subjects with large upper arm torque (amount of shoulder inner rotation and horizontal adduction) in throwing have larger elbow inversion torque (P<0.1) and larger shear force (P<0.05). Conclusion: These results suggested that throwing motion without strong upper arm torque and with larger shoulder motion range decrease the risk of shoulder and elbow injury in throwing.
著者
藤田 善也 石毛 勇介 吉岡 伸輔 竹田 正樹
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.275-282, 2014 (Released:2014-06-13)
参考文献数
10

The purpose of this study was to evaluate the relationships between race performance and cycle characteristics in a 10-km classic-style men's cross-country ski competition. The subjects were competitors in the 89th Japan National Ski Championships. Skiing motions of the subjects on flat stretches (1.5 km and 6.5 km) and uphill slopes (1.7 km and 6.7 km) were videotaped using two high-speed cameras. Cycle characteristics were calculated based on measurement of hip displacement and cycle time. It was revealed that elite competitors (1) performed at high velocity at all measurement points, (2) reduced their velocity in the last half of the race, (3) achieved a high velocity in double poling and diagonal stride, (4) increased their cycle length and cycle rate when employing the double poling technique, and (5) increased their cycle length when employing the diagonal stride technique.
著者
吉岡 伸也
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

フォトニック結晶を利用した構造色を持つチョウやゾウムシを対象に、結晶の配向と光学特性の関係を調べた。特にチョウの一種(マエモンジャコウアゲハ)については、単一鱗粉内の特定の結晶ドメインにおいて詳しい研究を行った。その結果、直交偏光配置では、入射する偏光の方向と結晶方位との関係により反射の強度が大きく変化することを明らかにした。また、表面構造の観察から得られた結晶配向を仮定した理論計算を行い、多結晶に分かれたフォトニック結晶構造が直交偏光配置で観察される鱗片のステンドグラス状の模様を生み出していることを明らかにした。
著者
石毛 勇介 吉岡 伸輔
出版者
国際武道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

アルペンスキーにおける膝前十字靱帯損傷発生のメカニズムについて、バイオメカニクス的手法を用いて力学的に考察をした。その結果、危険であると想定した2つの状況(後傾姿勢、膝関節外反・外旋位からのスキー板の切れ上がりによる膝関節外反・内旋位への急激な移行)において、それぞれ大きな張力が膝前十字靭帯に作用していることが明らかとなった。予防策としては、後傾時に上半身を出来る限り前に倒すこと、およびターンの外足に荷重をすることを極力避け、ターンの内足に荷重をして外足の荷重を内足に逃すことが重要である。