著者
山口 智 盛 安冬 板倉 秀清
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.285-286, 1997-03-12

遺伝子の進化の過程を模して最適化問題を解く遺伝的アルゴリズムに開する研究が盛んに行なわれている。これらの研究の多くは、適者生存 (淘汰)、他の遺伝子との混ぜ合わせ (交叉)、ランダムな遺伝子の変化 (突然変異)をもとに遺伝子の進化が進行することで最適化問題を解いている。近年の分子生物学の発展にともない、進化論に閲するさまざまな仮説があげられている。中原らの提唱するウィルス進化論は、進化の過程で遺伝子の変化にウィルスが関与することで、遺伝子が他の遺伝子と融合されると言うものである。ウィルス進化説では、新しく作られる遺伝子は親の遺伝子ばかりでなく他の種族の持つ形質を採り入れることすらある。この研究では、ウィルス進化論をモデルにした新しい遺伝的アルゴリズムを提案する。従来の遺伝的アルゴリズムが二つの遺伝子を混ぜ合わせることによって新しい遺伝子を生成するのに対して、本稿で提案する方法は、遺伝子プールの中を自由に渡り歩く素子 (以下この素子をウィルスと呼ぶ) を用いて新しい遺伝子の生成を行なう。ウイルスは、遺伝子プールの中を動き回りながら遺伝子の一部を自己の持つ遺伝子に書き換え新しい遺伝子を生成する。さらに遺伝子に、増殖、死、突然変異などの生命的概念を導入することによって、ウィルス自身の進化を促す。提案するアルゴリズムは、遺伝子プール内の遺伝子とともにウィルスが進化しながら解の最適化をはかる。また、ウィルスは最適化問題の解の一部とみることができる。これは、ウィルスがスキーマタ定理におけるスキーマの一つであると言える。本稿では、シミュレーション実験によりウィルスの進化がスキーマの進化であることを示す。