著者
板垣 信吾 光定 誠 城川 雅光 関 薫子 中島 康 横須賀 哲哉
出版者
島しょ医療研究会
雑誌
島しょ医療研究会誌 (ISSN:24359904)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.55-59, 2009 (Released:2021-07-12)
参考文献数
4

南鳥島は東京都小笠原村に属し,東京から約 2,000km 離れた日本最東端の離島である.当院は島しょ からの航空機搬送による救急患者受入れを行っているが南鳥島からの搬送は本邦における最遠距離搬送 と思われる.今回,同搬送の添乗医を経験し,その問題点について考察した.2001 年 1 月~09 年 3 月の 南鳥島からの離島緊急航空機搬送例全 6 例を対象とし,各症例について搬送要請から病院収容までの時 間の詳細を検討,他の離島(伊豆諸島および小笠原:平成 20 年搬送例)と比較した.搬送症例は 06 年に 1 例,08 年に 4 例,09 年に 1 例であり,診断は急性腹症 4 例,外傷 2 例であった.要請から航空機離陸 までの時間(lag time)及び総所要時間は他の離島と比べ極めて長くなっていた.遠距離であることに 加えて(1)複雑な事務手続き,天候不良等で lag time が通常の搬送より延長している可能性(2)添 乗医師到着後に再度診察や処置を行うことで現地滞在時間が延長している可能性が考えられた.対策 として(1)赴任前健診の強化(2)情報伝達の強化(3)事務要請経路の簡略化などが考えられた.