著者
小坂 至 光定 誠 若山 達郎 松浦 篤志 新井 浩士 横山 春子 田中 道雄
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.202-207, 2007-05-15 (Released:2009-02-27)
参考文献数
5

界面活性剤の大量内服後に多発小腸潰瘍・穿孔を来した1症例を経験したので報告する。症例は45歳の男性。自殺企図にて界面活性剤を大量に内服し, 急性薬物中毒にて当院入院となった。経過中に下血及び持続する右下腹部痛が出現した。上下部消化管内視鏡検査・腹部血管造影などにより, 小腸潰瘍からの出血と考えられ, バゾプレシンの持続動注を行い, 一時的な止血が得られた。その後腹膜炎症状及び再下血を認め, 小腸潰瘍による穿孔性腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した。約1.6mの空腸を残し回盲部切除術を行った。術後も残存小腸の潰瘍からと思われる下血を繰り返したが, 諸検査にて明らかな出血源は指摘できず, 保存的加療にて改善し, 術後55日目に軽快退院した。界面活性剤による中毒では, 腸管からの排泄と共に, 中毒症状が改善することが多い。しかし, 閉塞機転による腸管内の停滞などを契機に本症例のような重篤な経過をたどることもあり, 慎重な経過観察が必要である。
著者
板垣 信吾 光定 誠 城川 雅光 関 薫子 中島 康 横須賀 哲哉
出版者
島しょ医療研究会
雑誌
島しょ医療研究会誌 (ISSN:24359904)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.55-59, 2009 (Released:2021-07-12)
参考文献数
4

南鳥島は東京都小笠原村に属し,東京から約 2,000km 離れた日本最東端の離島である.当院は島しょ からの航空機搬送による救急患者受入れを行っているが南鳥島からの搬送は本邦における最遠距離搬送 と思われる.今回,同搬送の添乗医を経験し,その問題点について考察した.2001 年 1 月~09 年 3 月の 南鳥島からの離島緊急航空機搬送例全 6 例を対象とし,各症例について搬送要請から病院収容までの時 間の詳細を検討,他の離島(伊豆諸島および小笠原:平成 20 年搬送例)と比較した.搬送症例は 06 年に 1 例,08 年に 4 例,09 年に 1 例であり,診断は急性腹症 4 例,外傷 2 例であった.要請から航空機離陸 までの時間(lag time)及び総所要時間は他の離島と比べ極めて長くなっていた.遠距離であることに 加えて(1)複雑な事務手続き,天候不良等で lag time が通常の搬送より延長している可能性(2)添 乗医師到着後に再度診察や処置を行うことで現地滞在時間が延長している可能性が考えられた.対策 として(1)赴任前健診の強化(2)情報伝達の強化(3)事務要請経路の簡略化などが考えられた.
著者
光定 誠 石井 信一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.56-61, 2014

<b>【要約】</b>高齢者施設の訪問診療医による適正な救急搬送を目的としたトリアージ基準を考案し,実施した。二次救急適応と医師が判断した場合には,搬送要請前に収容病院をできる限り選定した。12 施設,252 名を対象とした10 カ月間の救急搬送は46 例で,トリアージを行った 41 例は全例二次救急適応と判断した。うち39 例について収容病院を要請前に選定した。5 例は訪問医を介さず搬送され,うち2 例が三次搬送となった。本トリアージを包括的判断に基づき行うことで,本人や家族が望まない三次搬送や高度な処置をある程度回避できる可能性があると考えられた。地域の医療資源を熟知した訪問医が,患者全体像を把握したうえで収容先を搬送要請前に選定できれば,患者側および救急にも有益であると思われたが,困難なことも多かった。また急変時には訪問医を介さずに患者が搬送されうることも想定し,家族等との密なコミュニケーションをもとにスタッフに明瞭な指示を出しておくことが必要である。
著者
飯島 準一 光定 誠 小坂 至 澤谷 哲央 小川 雅子 新井 浩士 松浦 篤志 若山 達郎 石川 文隆 田中 道雄
出版者
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 = Journal of abdominal emergency medicine (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.515-519, 2003-03-31
被引用文献数
5

症例は74歳男性。前日朝から増強する腹痛, 腹部膨満感, 嘔吐を主訴として翌朝当院救急外来を受診した。腹部単純X線上イレウス像を呈し, CTにてdouble target sign陽性で, 中央に低吸収域を認めた。超音波検査でも同様の所見で回腸回腸型腸重積と診断した。手術所見: 回腸末端より約40cm口側に回腸重積を認め, 用手整復後に腸管内に可動性良好な有茎性ポリープ状腫瘤を触知した。回腸部分切除術を施行し術後経過は良好で術後14日に軽快退院した。腫瘤は肉眼的に長径7cmの黒色のポリープ状を呈したが, 病理組織学的所見では内翻した真性憩室で出血壊死を伴い, また憩室頂部に異所性膵組織の迷入を認めた。膵組織には腺房細胞, 導管を認めHeinrichII型と診断した。成人例における憩室壊死の報告はわれわれの検索範囲では2例とまれである。