著者
土屋 久
出版者
島しょ医療研究会
雑誌
島しょ医療研究会誌 (ISSN:24359904)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.10-15, 2021 (Released:2021-02-01)
参考文献数
7

伊豆諸島南部地域の医療習俗について,八丈島と青ヶ島の巫俗(ふぞく:シャマニズム)を中心に考察した.神懸かりするミコ(巫女)は神役として中心的存在であり,祭祀儀礼に携わる他に各種相談に当たる役割も兼ねている.あるミコが対応した健康相談の内容を民俗病因論上類型化し,先行研究と比較した ところ多くの点で符号していた. 該当しない内容は祭文・経文の中に共通項を見出すことができた.当該地域に暮らす人々の伝統的な病気観や健康観,治療観を考察する作業は,保健医療の現場における問題を考える上で有用と思われる.
著者
松平 慶
出版者
島しょ医療研究会
雑誌
島しょ医療研究会誌 (ISSN:24359904)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.16-23, 2018 (Released:2021-02-15)
参考文献数
3
被引用文献数
1

東京都の小規模離島は 5 島あり,全ての島の診療所で,医師 1 人と少数のスタッフで診療,運営を行っている.各離島での人口,年齢分布,医療資源に差異はあるが,どの離島も本土から離れており,交通路が限られるため,島内の医療資源の中で的確に診療を進めるとともに,必要時には救急ヘリ搬送をはじめとして,患者,医薬品,資機材,検体の適切な移動が重要になる. また,小規模離島には高齢者入所施設がないため,今後の高齢化社会を見据えて,減塩,節酒,禁煙を含め,離島独自の環境での生活習慣病対策を進め,一次予防を行うとともに,小離島に適した介護環境を整える必要がある.
著者
小山 茂
出版者
島しょ医療研究会
雑誌
島しょ医療研究会誌 (ISSN:24359904)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.25-29, 2014 (Released:2021-03-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

一昨年 2012 年(平成 24 年)1 月 1 日、鳥島近海を震源とするM 7.0 の地震が発生した。 かつて居住者がいたが現在は無人島になっている東京の島として、八丈小島を以前紹介した。今回取り上げる伊豆諸島南端の鳥島は明治中期より 移住者が住みついたが、1902 年(明治 35 年)に噴火で在島住民全員が死亡するという痛ましい出来事があった。しかしそれ以来無人島状態が続いたわけではなく、その前後に様々な経緯ある歴史の投影された島だった。調査等で今も在島者がおり、緊急搬送も想定されうる(?)鳥島の過去から現在の姿を紹介する。
著者
小山 茂
出版者
島しょ医療研究会
雑誌
島しょ医療研究会誌 (ISSN:24359904)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.36-38, 2011 (Released:2021-07-25)
参考文献数
6

八丈島の北西 7.5 ㎞に位置する八丈小島(はちじょうこじま)(図1)は、かつて人が住んでいたが 1969 年以降無人島になっている。現在は学校跡などが残るのみで野生のヤギが生息しているだけとのこと。深作欣二監督の映画『バトル・ロワイアル』のロケ地になった島としてもよく知られている。 先日八丈島を訪れた帰り、空港のみやげ物店で 1 冊の本 1)と遭遇した。八丈小島が生まれ故郷で中学時代まで暮らした方の手記だった。前日登った八丈富士の山頂からも小島はよく眺められ、かねてから関心を寄せていた島だけに興味深く読了した。島の規模や姿形がかつて赴任した利島に似ていたのが、その理由かも知れない。
著者
宇田川 綾介
出版者
島しょ医療研究会
雑誌
島しょ医療研究会誌 (ISSN:24359904)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.11-16, 2022-11-30 (Released:2023-03-10)

東海汽船は本年 132 周年を迎えるグループ会社であり,海運関連事業を中心に展開し,観光及び生活航路の運航している.貨客船(大型船)2 隻と高速船 4 隻を有し東京の島々と本土を結んでいる.医療関係の事業としては,患者搬送,ワクチン搬送,血液搬送,そして災害時搬送などがある.
著者
小山 茂
出版者
島しょ医療研究会
雑誌
島しょ医療研究会誌 (ISSN:24359904)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.15-19, 2013 (Released:2021-03-12)
参考文献数
6

利島は伊豆大島のひとつ先にある小さな島であ る。竹芝桟橋と直接結ぶ船便が就航しているが、 定期船が島の港に直接着岸できるようになってか ら 30 年たった現在もその欠航率は高い。生活の鍵 を握る交通手段の運航状況は、医療資源の確保に も大きな阻害因子となってきたことは間違いない。 筆者は平成 3 ~ 4 年の 2 年間利島に赴任した。 残りあとわずかという時に「利島村史」医療行政 の節を執筆担当された谷島久雄先生にお目にか かった。その後村史は平成 8 年(1996)に発行さ れ、医療行政の節の別刷を頂戴した。これと赴任 中役場からいただいた小冊子、「利島雑記」の該 当部を中心に、交通事情の進歩を交えながら医療 の歴史を概説する。
著者
板垣 信吾 光定 誠 城川 雅光 関 薫子 中島 康 横須賀 哲哉
出版者
島しょ医療研究会
雑誌
島しょ医療研究会誌 (ISSN:24359904)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.55-59, 2009 (Released:2021-07-12)
参考文献数
4

南鳥島は東京都小笠原村に属し,東京から約 2,000km 離れた日本最東端の離島である.当院は島しょ からの航空機搬送による救急患者受入れを行っているが南鳥島からの搬送は本邦における最遠距離搬送 と思われる.今回,同搬送の添乗医を経験し,その問題点について考察した.2001 年 1 月~09 年 3 月の 南鳥島からの離島緊急航空機搬送例全 6 例を対象とし,各症例について搬送要請から病院収容までの時 間の詳細を検討,他の離島(伊豆諸島および小笠原:平成 20 年搬送例)と比較した.搬送症例は 06 年に 1 例,08 年に 4 例,09 年に 1 例であり,診断は急性腹症 4 例,外傷 2 例であった.要請から航空機離陸 までの時間(lag time)及び総所要時間は他の離島と比べ極めて長くなっていた.遠距離であることに 加えて(1)複雑な事務手続き,天候不良等で lag time が通常の搬送より延長している可能性(2)添 乗医師到着後に再度診察や処置を行うことで現地滞在時間が延長している可能性が考えられた.対策 として(1)赴任前健診の強化(2)情報伝達の強化(3)事務要請経路の簡略化などが考えられた.