著者
林 亮輔
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.140-159, 2011 (Released:2022-07-15)
参考文献数
26

わが国の公共投資政策は,その時々の経済情勢に応じて,地域間・分野間での公共投資の配分を大きく変化させてきた。本稿は,戦後の公共投資政策を総合的に評価することを目的とし,①景気低迷など需要サイドの影響を取り除いた「潜在厚生水準」を推計し,②生活関連型社会資本の直接的な厚生効果と,産業基盤型社会資本の間接的な厚生効果をとらえることで,公共投資が地域の厚生水準に及ぼした影響を検証した。 その結果,①公共投資政策は地域間の厚生水準格差を縮小する方向で作用していたこと,②都市圏では生活関連型社会資本,地方圏では産業基盤型社会資本への公共投資が,厚生水準の上昇に大きく寄与していることが明らかになった。 これらの検証結果は,今後,公共投資という政策手段を講じて地域間の厚生水準を上昇させるとするならば,それぞれの地域の厚生水準を最も高めうる社会資本への公共投資を重点的に行うことが重要であることを示唆している。
著者
林 亮輔
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.No.16, 2015-10

民間経済活動が行政区域を越えて行われている今日、地域政策は一体性の強い地域を対象に行う必要がある。しかし、民間の経済活動には様々な側面があるにもかかわらず、わが国においては学術的にも政策的にも、職場と居住地からなる通勤圏を都市圏とすることが多い。そこで本稿では、企業活動に基づいた都市圏である企業活動圏を法人使用車移動率によって設定し、金本・徳岡(2002)において設定されている都市雇用圏(通勤圏)と比較した。その結果、都市雇用圏は、中心都市と郊外都市が互いに隣接し合いながら形成されているのに対し、企業活動圏は、高速道路の存在により、郊外都市が点在しながら圏域が形成されていることが明らかになった。このように経済活動によって、一体性を持った都市圏域が大きく異なるという事実は、研究や政策の目的に応じて都市圏域を設定することの重要性を示している。