著者
林 信明
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-13, 2013-03

慈善事務所は、フランス革命期の1796 年、貧しい人びとを救済するために設けられた公的機関である。しかし実際は、革命の混乱で実動するまでには至らなかった。慈善事務所の存在が知られるようになるのは、ナポレオン帝政下においてである。その後、この事務所はいくども名称をかえながら、今日の自治体社会福祉活動センター(CCAS: Centre communal d'action sociale )に至る。総じていえば、19 世紀前半は産業資本主義の形成過程の最中にあって、社会救済への国家の関与は希薄であった。本論では、とりわけ国家責任が曖昧な当時において、慈善事務所がどのような役割を果たしたかについて論及する。