著者
林 剛人丸
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

1 研究目的本研究は新潟県十日町市に伝承されている玩具菓子『ちんころ』および新潟県中越地方を中心にして日本各地に伝承されているちんころに類似した玩具菓子のデザイン性について、現地調査をもとに主にデザイン的な見地から比較研究を行なうことを目的とした。2 研究方法(1) 現地調査対象地新潟県十日町市、熊本県山鹿市、秋田県湯沢市、石川県輪島市、三重県菰野町、千葉県松戸市(2) 調査項目玩具菓子の実物の入手および撮影、制作工程の取材、配布・頒布の状況取材、過去の資料の収集3 研究成果(1) 総じて米を素材としている。菰野町の事例を除き大部分は米の粉を練って造形されており、弾力性やコシなどの材料的特性から造形が導かれている。(2) 寺社を通じて配布若しぐは頒布されているものは素朴な造形であり、民間で頒布されているものほど手が込んでいて個性的な造形である傾向にある。(3) 造形には地域的な特性が認められるが、どの地域でも決まりごとが存在するわけではなく、作り手が自由に造形することが許容され複数のタイプのデザインが存在している。(4) 寺社を通さず民間で頒布を行なう地域においても、玩具菓子が信仰の対象となっているケースが見受けられた。(5) それぞれの玩具菓子が素材(米)・モチーフ(犬)・信仰の相関関係からデザインされた形態であると推測することができる。(6) 現存する犬の玩具菓子には時代によって盛衰が見られることから、各地に類似するものが比較的近年まで残されていた可能性を推測でき、今後の調査課題となった。