著者
林 匡宏 中原 宏
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1_59-1_68, 2017-07-31 (Released:2017-09-20)
参考文献数
11

魅力的なシークエンス景観には二種の時間軸が存在する。歴史性や文化性など長期的な時間軸と、徒歩圏域の景観体験などの短期的な時間軸である。この二種が織り成す景観特性や高揚感への影響について、江別市で最も古い市街地である「条丁目地区」を対象に調査・分析を行った。結果、景観構成要素のうち「歴史文化施設」や「樹木」など、背景に長期的な時間軸を有する要素が、シークエンス景観の中の「アクセント」として評価され、また 10m~50mの比較的に短い区間での景観体験にみられる「自然資源」の構成比の変化が、徒歩圏域の「リズム」となり、次の場面の高揚感向上に寄与していることが把握された。このような、大都市近郊地域の市街地景観に多様性と奥行きを付与する「アクセント」と「リズム」をコントロールすることで、これまで閑散としていた徒歩圏域の魅力化と、隣接する都市と併せた広域圏の価値向上に貢献すると考える。