著者
林 基弘 堀場 綾子 田村 徳子 川俣 貴一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.431-440, 2018 (Released:2018-06-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

聴神経腫瘍に対する定位的放射線治療, その中でも歴史的に古くかつ最高精度のガンマナイフによる臨床成績に関して多くの報告がすでになされている. 10年を超える比較的長期のフォローにおいて, 腫瘍成長制御は91~97%, 聴力温存は49~55%, そして顔面神経温存は93~100%と報告され現状でのコンセンサスとほぼなっており, 外科手術のそれと比較しても決して劣らない数字となっている. しかし, 現存線量設定に至ってまだ25年程度の歴史であるため, 40歳代以下の若い患者に対する治療コンセンサスは十分に得られておらず, まだ治療医ごとの個別の裁量に任されているのが現状である. 最近ではMRI画像の革新的進歩と, そのうえでの微小解剖学に根差した治療計画も実践されるようになり, 顔面神経は当然, 蝸牛神経の走行までを考慮して過照射せぬよう意識して照射治療が行えるようになった. このような技術革新を背景に, 現状における聴神経腫瘍に対する治療指針を定位照射治療医の側面から以下のように提案している. 大型腫瘍 (Koos stage 4) においては基本外科的摘出. 一方で, 小中型腫瘍 (Koos stage 1~3) においては, たとえ内耳道内腫瘍であっても経過観察は基本否定的であり, 有効聴力かつ若い患者 (40歳代以下) であれば外科的摘出を, 手術拒否もしくはそれ以上の年代の有効聴力患者 (50歳以上) に対しては定位的放射線治療を勧めるべきである. さらに神経線維腫症2型において, 聴力温存必至であるため定位的放射線治療による早期介入を積極的に行うべきと考えている.