- 著者
-
林 眞理
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 若手研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
転座や欠失など種々の染色体構造異常の中でも、染色体融合は最も危険な異常の一つである。染色体融合がどのように染色体の異常を引き起こすかについては、様々なモデルが提唱されている。しかし、どの程度の種類と数の染色体融合が、どの程度の時間を経てどのような異常を引き起こすのかについては、よく分かっていない。そこで本研究計画では、1つの姉妹染色体分体の融合を可視化できる細胞系を構築し、細胞の運命を継時的に解析することを目的とした。前年度までに姉妹染色体分体融合を可視化できる細胞システム(Sister chromatid Fusion Visualization system: FuVis)の構築に成功し、FuVisを用いたライブセルイメージング観察によって姉妹染色体分体融合の運命を追跡した。その結果、1つの姉妹染色体分体融合によって、微小核という染色体異常が生じていることが示唆された。しかしながら、CRISPR/Cas9による染色体の切断、DNA修復、mCitrineの発現の効果など、複数のパラメータの中で、本当に姉妹染色分体こそが、微小核の形成に影響を与えているのかを解析する必要があった。そこで本年度は、動画から得られたデータをさらに詳細に解析するため、京都大学白眉センターの加賀谷白眉との共同研究を開始した。これまでの解析から、階層ベイズモデルを構築し動画データをあてはめることによって、細胞の個性、染色体切断、姉妹染色分体融合、時間経過による蓄積効果など種々のパラメータの中から、姉妹染色体分体融合こそが微小核の形成に寄与していることを突き止めた。本研究成果はbioRxivにアップロードし、論文投稿段階にある。