著者
寺内 祐美 林 裕栄 関 美雪 延原 弘章 柴田 亜希
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.22-022, (Released:2022-11-08)
参考文献数
23

目的 本研究では女性における中高年向け運動教室の参加者と非参加者の医療費について比較検証する。方法 運動教室参加前1年間の年齢・医療費(本研究では医科入院外医療費・薬局調剤医療費を合計した医科入院外薬局調剤医療費と医科入院医療費とする)を参加群と対照群でマッチングし,参加群では2年間運動教室に参加した後,1年間の参加群と対照群の医療費を計4年間分析した。対象集団は首都圏A市にて2011年4月1日から2015年3月31日まで国民健康保険被保険者であり,2011年4月1日現在,60歳から69歳までの女性6,576人とした。筋力の向上に有効であることが示されているA市主催の中高年向けの運動教室(以下,運動教室とする)参加者のうち運動教室参加前1年間の医科入院医療費が0円の者かつ医科入院外薬局調剤医療費が50万円未満の者であり,2012年度,2013年度とも運動教室に参加している者を参加群416人とした(男性を除く)。対照群は参加群と性別・年齢・医療費を1対1でマッチングさせ416人とした。その上で4年間の1人当たりの医療費をもとに参加群と対照群の医療費をウィルコクソンの符号付順位検定を用いて比較検討した。比較方法としては,各群内の年度間の比較と各年度内の両群間の比較,参加群のうち運動教室に両年度とも15回以上参加した者と対照群を全年齢・65歳未満・65歳以上に分けた上での両群間の各年度内の比較を行った。なお有意水準は5%未満とした。結果 1.医療費の年度間の比較では両群ともに2011年度に比べ2014年度に有意な増加がみられた。2.ベースライン調整後の各年度内の医療費では両群間に有意差はみられなかったが対照群に比べ参加群の医療費が低く推移していた。3.運動教室に両年度とも15回以上参加した者の医療費は65歳未満で2012年度と2013年度の参加群の医科入院外薬局調剤医療費が有意に低かった。一方65歳以上で参加群と対照群の医療費に有意差はみられなかった。また医科入院医療費は全年齢と65歳未満で2014年度の参加群が有意に低かった。結論 運動教室の参加の有無に関わらず加齢とともに医療費は増加していくが,運動教室に継続的に参加することで医療費増加を抑制できる可能性が示唆された。また65歳未満では運動教室の継続的な参加が運動教室参加中やその後において医療費抑制の効果が期待できると示唆された。
著者
林 裕栄
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.2_23-2_34, 2009-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
19

本研究の目的は,訪問看護師の精神障害者への援助における困難を明らかにすることである。研究方法は,M-GTAを用いた。研究参加者は,2カ所の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師9名に対して主にインタビュー調査を行った。調査期間は、2002年11月から2003年8月および2005年8月から10月であった。 在宅精神障害者の訪問看護の困難は,[契約遂行の困難][在宅での援助の困難][関係者との連携の困難][看護師同士で支え合うことの困難]の四つのカテゴリーで構成された。 看護師の抱える困難を解消するには,訪問看護師への教育や,利用者,訪問看護師,病院側の三者の合意形成が必要である。そして看護師が継続した,安定的な援助を行うためには,何よりもまず訪問看護制度やケアマネジメントシステムの体系化・明確化が図られる必要がある。これにより初めて訪問看護師が自立した援助を行うことができることになる。