著者
中川 朋美 山本 圭彦 坂光 徹彦 堀内 賢 林下 智惠 福原 千史 浦辺 幸夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0352, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】 我々は円背姿勢に対する背筋エクササイズ(以下、Ex)として、腹臥位での上体反らし運動を行ってきた。しかし、この運動が十分に行えない高齢者も多い。本研究の目的は椅座位で行えるExを実施し、円背姿勢が変化するかを検討することで、このような方法が運動療法として有効であるかを確認することである。【方法】 対象は本研究の趣旨に賛同が得られた外来通院中の女性患者26名とし、明らかに座位姿勢で円背が認められる円背群13名と、円背を認めない非円背群13名に分けた。平均年齢は円背群で80.3歳、非円背群で74.3歳、平均身長は円背群で148.1cm、非円背群で148.8cmだった。Exは両上肢を大腿部の上に置き、上肢で支えながら円背をできるだけ修正させた姿勢(修正椅座位)を10分間保持させた。その際、なるべく上肢に頼らないよう指示した。Ex前に安静椅座位と修正椅座位での座高と脊柱の彎曲角度を、Ex後に安静椅座位での座高と脊柱の彎曲の角度を測定した。座高はメジャーで、脊柱彎曲はSpinal Mouse(Idiag AG,Switzerland)を用いて測定し、Th1~S1の各椎体間がなす角度の和を算出した。【結果】 円背群のEx前の座高の平均(±SD)は73.8±2.5cm、非円背群は75.6±1.7cm、円背群の脊柱全体の彎曲角度は66.5±17.5°、非円背群は22.3±12.4°であった。円背群の修正椅座位での座高は79.7±1.3cm、非円背群は77.9±1.6cm、円背群の脊柱全体の彎曲角度は29.5±7.5°、非円背群は14.2±9.7°であった。修正椅座位での円背群の座高は安静座位に比べて平均5.9±2.3cm増加し(p<0.01)、非円背群は2.3±1.5cm増加した(p<0.01)。円背群の脊柱の彎曲角度は-33.8±18.7°(p<0.01)、非円背群は-8.8±10.6°(p<0.01)の減少がみられた。座高の変化と脊柱の彎曲角度の変化量に有意な相関が認められた(r=0.42,p<0.05)。Ex後に、座高は平均1.2±0.8cm増加し、脊柱の彎曲角度は-6.2±0.7°になりEx前とEx後の間に有意差が認められた(p<0.05)。【考察】 円背姿勢は骨自体の変形、靭帯や関節包などの静的支持組織の変化、脊柱起立筋などの動的支持組織の弱化など様々な因子が影響している(金子,2005)。今回Ex後に円背姿勢が改善したことから、静的支持組織を補助するだけの背筋筋力が向上すれば円背姿勢を修正できる可能性があると考え、座位でのExも円背姿勢の改善に対し有効であるとことが推測された。しかし、この効果が持続するかを検証することが必要である。【まとめ】 今回、椅座位にて簡便に行えるEx方法を実施し円背姿勢の改善効果を検討した。Ex後は座高が高くなり、円背姿勢の改善効果があると考えられた。