著者
木村 純子 野田 恵子 楠田 康子 林原 礼子 近藤 泰子 白川 孝子 桜井 宏子 横手 香代 細澤 仁 中田 裕久 馬場 久光
出版者
神戸大学保健管理センター
雑誌
神戸大学保健管理センター年報 (ISSN:09157417)
巻号頁・発行日
no.23, pp.83-88, 2003-04

神戸大学で,2年次学生を発端者とする結核集団感染が発生した。その後の調査により,この学生が神戸大学に入学する2ヶ月前に,高校3年次の同級生が'排菌'を伴う結核で入院していた事が判明した。また,他の大学に進学した当時の同級生2名と副担任1名も,神戸大学における発端者とほぼ同時期に結核を発病していた。結核菌のDNA分析により,神戸大学における結核集団感染の発儒者と同級生2名および副担任1名の起炎菌は同一株と判明し,これら4名の者は全て,高校3年次の患者から感染し,約1年~1年半を経て発病したものと考えられた。翌春,新入生全員 (3,871名)に「入学以前の結核感染の機会」など'結核'に関する質問項目を含む健康調査を実施した。調査用紙を提出した3,797名(回収率 98.1%)の中に,「結核治療中の者」はいなかったが,「過去に結核の治療を受けた者」が14名(0.4%)存在した。また,「結核で入院したり,入院している人が周囲にいる者」が118名(3.1%)〔(1)現在5名,(2)過去1年以内36名,(3)過去1~2年16名,(4)3年以上前61名〕存在した。神戸大学における事例や,結核菌感染から発病までの一般的な期間に鑑み,(1)~(3)の計57名は,新入生健康診断時の胸部X線撮影では異常がなくても,在学中に結核を発病する可能性の高い集団と考えられた。以上のことから,新入生に対して「入学以前の結核感染の機会」について調査することは, 発病の可能性の高い学生を予め把握し,結核集団感染を未然に防ぐ上で極めて有用であると考えられた。