著者
小川 利久 辻 英一 林原 紀明 丹羽 隆善 多田 敬一郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.2869-2873, 2015 (Released:2016-06-30)
参考文献数
15
被引用文献数
2 4

頸部手術の際,胸管損傷により発生する乳糜瘻の頻度は1.0-2.5%と報告されており,低頻度ではあるが起こりうる.しかし,本邦における報告は極めて限られていて,詳細は不明である.われわれが行った380例の甲状腺癌手術,頸部リンパ節手術症例を対象に検討した.頸部郭清を伴う甲状腺乳頭癌手術症例は314例で,うち5例(1.6%)に,また頸部リンパ節生検や摘出術は66例あり,うち2例(3%)に術後乳糜瘻が発生した.いずれも左側の頸部郭清やリンパ節生検であった.乳糜胸水を認め胸腔ドレナージを要した症例は2症例であった.治療は,軽度な症例は脂肪食制限のみで治癒したが,一方で再開創・胸管結紮を行い治癒した症例は5例あった.近年,オクトレオタイドによる全身治療で治癒した2症例を経験した.オクトレオタイドは安全で有効な治療法と思われた.