著者
枡富 由佳子 邉見 蓉子 田中 結子 枡富 健二
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.66-79, 2019-02-25 (Released:2020-01-31)
参考文献数
46

第三大臼歯は,大臼歯のうち最も後方に位置する歯で臨床的問題がしばしば出現することから,それらに対する対応が求められる。しかしながら,第三大臼歯に対する治療の明確なガイドラインが存在しないため,対症療法であったり,個々の歯科医師の経験に基づく判断で治療介入が行なわれているのが現状である。そこで,今回われわれは,当院の患者のパノラマエックス線写真を用いて第三大臼歯のエックス線学的形成時期の調査と治療介入時期に関する検討調査を行った。 本調査から,パノラマエックス線写真で第三大臼歯の骨包の形成が確認できる目安は9.4 歳であり,歯冠は13~15 歳で形成が完了し,歯根は16~17 歳頃形成が開始し,18~23 歳頃に形成が完了することがわかった。18 歳以降の調査から第三大臼歯を1 歯以上有する者は94.8%であり,そのうち60.7%の者に4 歯全て存在することがわかった。第三大臼歯の97.3%は顎骨から歯冠が萌出しており,口腔内に萌出しない場合でも多くの第三大臼歯は粘膜下での埋伏であることがわかった。また,患者の意識調査から,第三大臼歯に対する認識は約80%にあり,そのうち「要らない歯」と認識する者が約60%と多かった。抜歯に対しても「早く抜くべきであれば抜いてほしい」と考える者も多く,抜歯時期については「すすめられたら」や抜歯時期については「定期検診時に情報提供を求める」とする者も多かった。 本調査を通し,第三大臼歯は全ての人に存在することを前提に,骨包の出現が始まる9 歳頃より管理を開始し,周囲の歯や歯列への影響が出現すると考えられる歯根形成時期である中高生時期には特に注視しながら,保存か抜歯の検討を早期から行うことが大切だと思われた。その際には,スクリーニング法としてパノラマエックス線写真は有効であり,また,画像所見や症状に基づいたフローチャートを使用することで客観的な判断が可能となることが示唆された。