著者
柘植 章彦 井上 寛 米屋 勝利
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.82, no.951, pp.587-596, 1974-11-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1 3

窒化チタン (TiN) の焼結に関する既報の研究例は数少ない. この報告はTiN-CoおよびTiN-WC-Co系合金の焼結に関したものである. すなわち, X線回折, E. P. M. A., I. M. A., 諸焼結特性の測定, および合金の強度測度などによって基本的諸現象に検討を加えた.おもな実験条件は次の通りである.1) 合金組成 (重量%),TiN-20wt% Co, TiN-25wt% Co, TiN-10wt% WC-20wt% Co, TiN-5wt% WC-25wt% Co, TiN-40wt% WC-20wt% Co2) 焼結条件,1600℃, 1700℃, 1800℃, 10-240min, Ar気流中その結果, 次のような知見を得た.用いた主原料TiNとCoの間には, 相互の溶解現象 (少量と思かれる) が認められた. また, これにWCを加えたTiN-WC-Co 3元系合金では, WCが他の2相に溶解する. おもにW原子がCo相に, C原子がTiN相へ溶解することを推察した. 2および3元系 (40WC添加系を除く) 合金の主構成相は粒子相であるTiN相, およびその結合相のCo相である.合金組織の検討によれば, 2元系合金では焼結初期から粒子相のスケルトンが形成され, この系におけるTiN粒子のCo相に対する不完全な濡れ性が推察された. しかし, 3元系合金ではこのような現象が認められなかった. これはWC添加により濡れ性がある程度改善されたことによると考えられる.TiN-10WC-20Co系の液相焼結過程のうち, 予想したsolution-precipitation過程を解析した結果, この過程は固-液界面における反応に律速されることを推察した.合金の機械強度はTiN-WC-Co 3元系合金の方で一般にTiN-Co 2元系合金に優ったが, これはおもに結合相の差異によるものと思われた.