著者
柚木 貴和
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、ヒト膀胱平滑筋細胞のATP感受性カリウムチャネル(KATpチャネル)におけるKir及びSUR蛋白のサブタイプの決定を行い、膀胱平滑筋KATPチャネルの分子実体の解明を第一の研究目的とした。さらに現在開発中の膀胱選択性KATPチャネル開口薬や従来のKATPチャネル開口薬を用い、モルモット及びヒト膀胱平滑筋収縮に及ぼす効果を詳細に検討し過活動膀胱治療薬としての有効な薬剤を検索することを第二の研究目的とした。第一の研究目的であるが、ヒト膀胱平滑筋のKATpチャネルは電気生理学的実験および分子生物学的実験よりKir6.2+SUR2Bという構造が主に機能し、加えてKir6.2+SUR1という構造も一部機能していると考えられた。このようなサブタイプの組み合わせは血管平滑筋などの他の臓器のKATpチャネルとは明らかに異なっており、膀胱選択的なKATPチャネル開口薬の開発の可能性を期待させるものであった。第二の研究目的については、膀胱選択的といわれているZDO947と他の薬剤を比較しながら、さらに膀胱平滑筋と血管平滑筋を比較しながら検討した。その結果、ZDO947は他の薬剤より低濃度の領域から膀胱平滑筋のカルバコールによる収縮を抑制し、さらに血管との比較によって他の薬剤より優れた膀胱選択性を有することが明らかとなった。またこの膀胱選択性にはSUR1の発現が関与している可能性も示唆されたが、それについては現在検証中である。さらにKATPチャネル開口薬を臨床応用に近づけるために、現在過活動膀胱のモデル動物を作成し、それらにおける各種KATPチャネル開口薬の作用、副作用も検討する実験を試みている。