著者
柳渾 一希 (2008) 柳澤 一希 (2007)
出版者
首都大学東京
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度は,昨年度までのシミュレーションモデル・数理モデルに主に基づいていた研究を発展させ、地域公共施設の再整備に取り組むためのより実証的な研究を実施した。第一に、電子自治体の推進のなか近年の自治体に急速に普及している公共施設予約システムについての研究を行った。この予約システムによれば、施設の利用目的や利用頻度などの施設需要などを精緻に把握できるため、ここから得られる情報をもとにした、新たな公共施設管理手法の開発も可能であると思われる。このため、アンケート調査により現状の予約システムの普及状況を把握し、今後の公共施設管理についての見通しをたてた。第二に、昨年度開発した競合して立地する施設と他施設との利用圏の重なりの影響を考慮した施設利用者密度の幾何学的分析手法に基づく重要構造分析モデルを実際の観測データをもって検証した。具体的には、鈴木ほか(利用者の選好に立脚した通所型高齢者施設の利用構造と配置の分析、日本建築学会大会学術講演梗概集、F-1、pp.649-650、2002)により観測された高齢者福祉施設の利用者分布の状況を、多重ボロノイ図にもとづき解析し、開発した分析手法の有用性を示した。第三に、昨年度開発した施設再配置モデルを再検討し、施設閉鎖とともに施設移転を考慮した最適配置シミュレーションにより最適な施設統廃合についての試算を行った。この際、地域の将来人口・公共施設の建築年数・公共施設の空室率の3要素のうち、いずれの要素から優先順位をつけるかにより、閉鎖・移転施設の組合せにより統廃合後の施設利用者の負担が大きく変わることを確認した。同モデルは統廃合計画の効果測定にも有用である。